【弁護士とSNSパトロール】タイムラインにあふれる、法律違反をチェックせよ!
アソベン編集部
おち
「この世は、どれだけの法律違反にあふれているのだろう…」
すみません、街を見下ろしながらちょっと黄昏れてました、おちです。
さて最近、暇さえあれば、こうやって世の中を憂いてしまうほど、正義感にあふれている私。
そんな私がいま特に憂いを強めているのが、
SNS!
よくはわかっていませんが、なんとなく法律違反が蔓延っているような気がします。(そんな話もよく聞きますし)
というわけで、今日はそんなSNSをパトロールしようと思います。
もちろんスマホで!
SNSパトロールにあたって、今回はこの方にご協力をお願いしました!
吉田 圭佑(弁護士/アディーレ法律事務所)
岩手県出身。中央大学法科大学院を卒業後、弁護士に。現在はアディーレ法律事務所にて、債務整理、交通事故の被害、浮気・不倫の慰謝料問題など幅広い案件を担当する。またプライベートでは多趣味であり、特にアニメ音楽や声優など、 “オタクカルチャー” に造詣が深い。
それではSNSパトロール
はじめます。
CASE1:アニメキャラをアイコンに設定
え、早速なにかありました?
これは…
↓
↓
↓
イメージ画像へ変換!
アニメアイコン!
…ですね。けっこうよく見ますが、法律違反ですか?
はい。その可能性が高いと思います。
なんと。
アニメなどのキャラクターを許可なく、SNSのアイコンとして使用する行為は著作権侵害にあたります。
著作権侵害ですか。
はい。原則として、アニメをはじめ、イラストや音楽、小説など、様々な創作物は「著作物」として保護され、 著作権者に無断で使用することはできません 。
もちろん作者や公式がアイコン使用を公に許可しているケースなどはOKですが、そういった事情なくこのキャラクターを使っているのだとすれば、「著作権法違反」に該当するといえるでしょう。
個人のアイコンくらいならいいと思ってたんですが、ダメなんですね。
個人とはいえ、SNSのアイコンは基本的にはNGですね。
実は著作物でも、「私的利用」の範囲であれば、特別に許可を得ることなく使用は可能です。
ただこの「私的利用」とは、家庭内などごく狭い範囲で使用する場合に限られます。そのためXやInstagram、LINE、YouTubeなど、SNSでの使用は「私的利用」の範囲外となり、許可なく使うことはできません。
ありがとうございます。というわけで、
アニメアイコンにしているあなたへ。
【吉田弁護士】補足解説
SNSのアイコンに、有名人の写真を使用することも控えましょう。有名人の「肖像権」や「パブリシティ権」に対する侵害となり、場合によっては、損害賠償を請求される可能性があります。
肖像権…個人が自身の肖像を、みだりに撮影されたり、公開されない権利
パブリシティ権…有名人や著名人が、自己の氏名や肖像などについて、対価を得て第三者に専属的に使用させ得る権利
少し味気なく感じてしまう方もいるかもしれませんが、自身で撮影したり、作成したりした画像を使用するのが無難です。
CASE2:マンガの一コマ大喜利
アニメアイコンが違法なら、これも違法になりそうじゃないですか?
たしかにこれも違法となる可能性がありますね。
マンガの一コマ大喜利!
ですよね。
原則として、著作権者の許諾なく著作物が使用できないのは、先ほどお伝えした通りです。ただ今回のケースは、一応 「引用」として認められる可能性 を踏まえておいてもいいでしょう。
引用ですか。
はい。著作権法 第32条には 「公表された著作物は、引用して利用することができる。」 という定めがあり、以下のような要件を満たした場合、引用として著作物の使用が認められる余地があります。
ⅰすでに公表された著作物であること。
ⅱ引用部分が明瞭に区分されていること。
ⅲ自分の文章と引用部分と「主従関係」にあること
ⅳ原則として、原型を保持
ⅴ公正な慣行に合致し、引用の目的上正当な範囲内
ⅵ出典の明示
たとえばⅲの要件から、「引用」と認められるには、自分の文章が「主」、引用部分が「従」であることが必要です。
ただ今回のような、 “簡単な文章にマンガのコマをつける” という投稿では、 あるべき「主従」が逆転していると考えられ、引用とは認められないといえます。
なるほど。
そのため今回のケースは結局、引用ではなく無断転載となり、「著作権法違反」にあたりうるでしょう。
最近では出版社や作者の許諾を得て、「マンガのコマ」を使用できるサイトもあります。許諾があれば適法に使用できるため、使いたい方はぜひこういったサイトを活用してみるのがおすすめです。
ありがとうございます。というわけで、
「マンガの一コマ大喜利」をしているあなたへ。
【吉田弁護士】補足解説
以下のような投稿もSNSではよく見られますが、厳しく言うと、「著作権法違反」となる可能性があります。
Webページの文章を “引用”した投稿!
すでにお伝えしたように、引用と認められるには『ⅲ自分の文章と引用部分と「主従関係」にあること』が必要です。
このように「“ ”」で引用部分がわかるようにしていても、“引用” した文章がほとんどを占めてしまうと、自分の文章が「主」であると認めることは難しいでしょう。
おそらく多くの方がなにげなく使っているかと思いますが、意外と「引用」 は難しく、ご注意いただけると良いかと思います。
CASE3:「テレビ映像」の写り込み
あ、これはどうなんですかね?
これは…
スポーツ中継を見て、喜び合っている人たちの動画!
(テレビの映像が動画に写り込み!!!)
難しいですが…違法とまでは言えないのではないかと思います。
あ、そうなんですか。
はい。大前提として、テレビの映像は著作物であり、許可のない使用はできません。ただ今回のような 「写り込み」であれば、許される余地 があります。
その規定は 『著作権法 第30条2項』 に書かれており、少しややこしいのでざっくりとお伝えすると、
ⅰ 写りこんだ他人の「著作物」を分離することが困難であって
ⅱ 写りこんだ他人の「著作物」が与える、その作成する写真や動画等への影響が軽微であり
ⅲ 写りこんだ他人の「著作物」の著作権者の利益を不当に害しない
を満たす場合には、使ってもいいよ、ということが規定されています。
ここからたとえば、 写真を撮影した際に意図せず写りこんでしまったポスター や、 街頭を動画撮影した際に写りこんでしまった音楽や映像 については、許諾がなくとも許されると解されます。
写り込みがあっても、許されることがあるのか。
そうですね。今回のケースで考えてみると、「スポーツ中継を見て、喜び合っている人たち」がメインで、テレビ映像の写り込みが占める物理的な割合は小さく見えます。
とはいえ、テレビ映像が動画における重要部分を占めているようにも思えるため、かなり微妙ではありますが…違法とまではいえないのではないかと思います。
ありがとうございます。というわけで、
「スポーツ中継を見て、喜び合っている人たちの動画」をアップしているあなたへ。
【吉田弁護士】補足解説
もちろんあえて「それを見せることを主目的」に、テレビの映像を撮影し、SNSにアップする行為は違法となる可能性が高いといえます。
たとえば、
テレビ番組が流れている「画面を撮影」した動画!
SNSではこうした投稿もよく目にしますが、基本的に「写り込み」とは認められないでしょう。
著作権者の許諾がなければ、このような動画はもちろん、テレビ映像を撮影した画像でも「著作権法違反」にあたるため注意が必要です。
CASE4:「事件現場」などを撮影した動画のアップ
あ、
暴れている人を撮影した動画(モザイクなし)!
こうした事件現場を撮影した動画ってけっこう見るんですが、これはどうなんですかね?
難しいですが…先ほどお伝えした「肖像権」や「プライバシー権」の侵害に該当する可能性はありますね。
そもそも被害者のみならず、加害者(と思われる)方にもこうした権利は存在します。つまり許可なく、 「自己の容貌を撮影されたり、その写真や動画を公表されない権利」 があり、原則としてこれを侵すことは認められません。
なるほど。
そのため「多くの人にこの事件を知らせたい」と思ったとしても、加害者(と思われる)方のプライバシーには十分に配慮すべきです。
動画をアップするにしても、 ぼかしをつけるなど、本人が特定できないようにした方がいい ですね。
ありがとうございます。というわけで、
「暴れている人を撮影した動画(モザイクなし)」をアップしているあなたへ。
SNSパトロール終了後
吉田先生
あ、はい。
今日はSNSパトロールにお付き合いいただき、ありがとうございました。
いえいえ。
やっぱりSNSには法律違反がたくさんあるんですね。
そうですね。
……
やはり知らずにやってしまうことも多いんだろうと思います。
そうですね…
もちろん法律違反をしたからといって、そうそうすぐに捕まえられるようなことはないかもしれません。
ただ今日取り上げた「著作権」や「肖像権」、「プライバシー権」のように、法律は自分を含め、誰かの当たり前の権利や自由を守るために存在しています。
はい。
「法律違反」は、それを侵害した結果ともいえます。だからこそ「法律違反だから気をつけよう」ではなく、その手前にある、誰かや、その誰かがつくったモノへの「配慮やリスペクト」を心がける。
みんながそうやってSNSと付き合っていけば、より安心して楽しく居られる場所になっていくんじゃないかと思っています。
そうですね。
というわけで、みなさまもぜひ、十分なお心づかいの上、より良いSNSライフをお過ごしください!
あ、ちょっと止めましょう。