当たらなくても、暴力は犯罪になる?!【クイズ】これって犯罪になる?ならない?
アソベン編集部
おち
こんにちは、アソベン編集部のおちです。
さて本日も、 クイズです!
本日はこちらのクイズで、みなさんが どれだけ “犯罪を見抜く力”があるのかをチェックしていただこうと思います。
とある『シチュエーションでの行動』が、「犯罪になる?」のか「犯罪にならない?」のか。2択よりお答えください。それでは、
さっそく例題から!
(ヒント)可能性のある犯罪: 窃盗罪
こちらの例題、みなさんわかりましたでしょうか?
①わかった方
→→ 一足先にクイズ へ!
②わからなかった方
→→ このまま簡単に予習してからクイズへ!
(※)今回の「犯罪になるか、ならないか」は、原則における判断となります。実務上の見解は、個別の事情から変わる可能性があります。
本日クイズを出題いただく弁護士はこちら!
岩井 直也(アディーレ法律事務所)
東京大学を卒業後、予備試験を経て、弁護士に。現在はアディーレ法律事務所にて、残業代請求などの案件を手掛ける。プライベートでは小学生の頃からのアニメ好き。これまでに500作品ほどを制覇した。現在は特に『ウマ娘』推しで、そこから転じて競馬も見るようになった。(東京弁護士会 所属)
【クイズ前の予習】「犯罪になるか?ならないか?」のポイント
はい。
ちなみに例題も「窃盗罪になる」とのことなんですが、これ…そうなるんですね(笑)。
一般的な感覚からすると「悪いことをしてないのに犯罪になる」というのは、ちょっと不思議に思うところもあるかもしれないですね(笑)。
そうなんですよ。どう考えたら、そうなるんだろうと。
法的にとある行為が「犯罪かどうか?」は、基本的に3つのポイントで考えられます。例題の解説も踏まえて、クイズの前にそちらを簡単に見ていきましょう。
はい、よろしくお願いします!
「犯罪かどうか?」は、3つのポイントで考える
基本的に「犯罪かどうか?」は、以下3つのポイントで考えていきます。
その他に考えるべき要素が発生するケースもありますが、基本的にはこの3つすべてで「有罪」となれば、「犯罪になる」と判断できるとお考えいただいていいでしょう。
なるほど。
ではここからそれぞれどんな内容なのか、簡単にご紹介していきましょう。
①構成要件に該当するか?
構成要件とは、法律(主に刑法)の条文で規定された、犯罪が成立するための原則的な要件です。
『犯罪のカタログ』とも呼ばれ、犯罪ごとに「こういうことをしたら成立する」といった内容がまとめられています。
とある行為が犯罪かを考える際、どの犯罪の構成要件にも該当しなければ、「犯罪にならない」となりますので、ここはまず一番にチェックする項目ですね。
まずはその構成要件から、「なにかしらの犯罪に当てはまらないか?」をチェックする。
そうですね。たとえば先ほどの例題を参考に見てみましょう。
【例題の内容】
盗まれた自転車をコンビニの駐輪場で見つけた。誰かが乗り回している様子だが、確実に自分のモノなので、黙って乗って帰る
まず窃盗罪の構成要件はざっくり言うと、 「誰かの占有する財物を、その人の意思に反して移転させる」という内容となります。
これに当てはまれば「窃盗罪になる」ということになりますが、ここで問題となってくるのが 『占有する財物』という部分です。
つまり『盗まれた自転車』が自分以外の誰かの『占有する財物』であるなら、黙って乗って帰っているので、「窃盗罪になる」という判断ができます。
占有する財物…。
簡単に言うと、「その時点でその人が 事実上 “所持(支配)している財物” 」です。
たとえば例題を見てみると、『盗まれた自転車』は「誰かが乗り回している様子」とのことなので、今は自分ではなく、その “誰か” が事実上所持(支配)した状態といえます。
つまり自分以外の誰かの『占有する財物』にあたり、自分のモノであっても、黙って乗って帰れば「窃盗罪」となるということになります。なるほど…。
「自力で取り返すのは基本的にはNGなので、警察の協力を得たり、裁判で法的に取り返していくことになりますね」
ちなみにですが、「犯罪」はそれぞれ、なにかしら「国民の利益が害されるのを守る(法益)」ために設けられています。
たとえば窃盗罪でいえば、「モノを占有している状態」ですね。
それを害したら「犯罪になる」とも考えられるので、「犯罪かどうか?」を考える際は、『とある行為がどんな利益を害しているのか?』にも注目してみていいかもしれません。
【岩井弁護士】補足解説
刑法には『罪を犯す意思がない行為は、罰しない。(第38条1項)』という条文があります。そのため原則としては『罪を犯す意思(故意)』がなければ、犯罪とはなりません。
(※)例外として『罪を犯す意思(故意)』がなくても、「不注意で、その結果を起こしてしまった(過失があった)」場合に成立する犯罪もあります。(過失により人を死亡させた場合に成立する「過失致死罪」など)
②違法性があるか?
構成要件で「犯罪にあたる」となった場合、次にチェックするのが「違法性があるか?」です。ここで「違法性がない」となれば、犯罪にはなりません。
「違法性がない」ってなることがあるんですね。
そうですね。たとえば「違法性がない」とされる典型的な事由として、『正当防衛』があります。
聞いたことがある方もいらっしゃると思いますが、 自分や他人を守るためにやむを得ず行った行為のことです。
またその他の事由としては、自分や他人に降りかかる現在の危難を回避するため、やむを得ずに行った行為『緊急避難』や、正当な業務上の行為(医師の外科手術やボクシングの試合など)があります。
③有責性が認められるか?
そして3つ目に見ていくポイントが、「有責性が認められるか?」です。
これは端的に言うと、違法行為をしたことについて、その人に「責任を問えるか(非難できるか)」という内容になります。「責任を問えない(非難できない)」となれば、犯罪とはなりません。
そんなポイントが。
代表的なのが、ニュースなどでもよく見る、精神障害による心神喪失ですね。
たとえば「善悪が判断できない状態」で行った違法行為は、「責任を問えない(非難できない)」と判断されます。
その他、14歳未満の子どもが行った行為なども、有責性が認められず、犯罪になりません。
と、ここまでが「犯罪かどうか?」を考える、基本的な3つのポイントになります。
ありがとうございます。なんとなくわかりました(笑)。
やはりややこしい部分はありますが、ぜひ参考にクイズを解いてみていただければと思います。
はい。それでは、クイズをはじめていきましょう!
「クイズ!これって犯罪になる?ならない?」全6問
それでは「クイズ!これって犯罪になる?ならない?」、ここから本編スタート!
問題は全6問です!
第1問
問題の解説
「当たっていないのに、暴行罪になるんだ」と疑問に思われた方もいらっしゃるかと思いますが、実は暴行罪が成立するのに「当たったか、当たっていないか」は関係ありません。
暴行罪が成立する条件は、
「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったとき」
(傷害を負った場合は『傷害罪』)。ここでいう『暴行』とは、「不法な有形力の行使」を意味するとされています。
つまり「拳で殴る」や「バットを振り回す」、「石を投げつける」など、人に対して物理的な力を行使すれば、結果は関係なく『暴行罪』が成立します。
(ヒント)可能性のある犯罪: 暴行罪
第2問
問題の解説
結果だけで見れば、完全に食い逃げなので、主に詐欺罪にあたる可能性が考えられます。ではなぜ犯罪にならないのか、その構成要件から見てみましょう。
詐欺罪の構成要件として、 「欺罔行為(人を欺く行為)によって、財物を交付させる」 という内容があります。
つまり「相手を騙して料理を提供させていた」ら詐欺罪 となってくるのですが、今回の場合は 注文時点(財布を忘れたことに気づくまで)は代金を払う意思があるんですよね。
そのためお金を払う意思を持って注文し、料理を提供してもらっているので、「欺罔行為(人を欺く行為)」はなく、詐欺罪は成立しません。
(ただし当然ですが、犯罪にならないからといって、「料金を支払わずに済む」ということはありません。もし食事中に財布を忘れたことに気づいたら、事情を説明して対応しましょう。)
ちなみに今回は「店員が見ていない隙に逃げた」のですが、これが「外でお金をおろしてくる」などとウソをつき、そのまま逃げた場合は、詐欺罪が成立してきます。
実は詐欺罪は2種類あり、物やサービスに加え、「支払い義務」といった財産上の利益も対象です。
払わなければならない食事代があるなか、店員さんを騙して逃げてしまうと、「欺罔行為(人を欺く行為)」によって、「支払い義務」を免れた(財産上の利益を不法に得た) ということで、詐欺罪となります。
(ヒント)可能性のある犯罪: 詐欺罪
第3問
問題の解説
まず証拠隠滅罪が成立するのは、刑法の条文から「 他人の刑事事件 に関する証拠を隠滅」した場合 となります(第104条)。そのため自分が犯した殺人事件の証拠を隠滅しても、証拠隠滅罪とはなりません。
ちなみに少し補足として「なぜ他人の事件に限定されているか」をお話すると、クイズの予習で触れた「有責性」が関係してきます。
一般的に考えて、殺人に限らず、犯罪を犯した人が自分の証拠を隠滅しようと思うのは、ごく自然なこと ですよね。つまりそれをしてしまうのは当たり前のことで、あえてその違法な行為を選んだわけではないということになります。
法律ではこうした行為について 「責任を問えない(非難できない)」と考え、犯罪とはなりません 。こうした背景から、証拠隠滅罪から自分の犯した罪が除外されたのだといえます。
(ヒント)可能性のある犯罪: 証拠隠滅罪
第4問
問題の解説
名誉毀損罪は 「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損」した場合に成立する犯罪 です。
原則としてこの 『事実』は真実でも虚偽でも関係ないのですが、死者に対しては「虚偽」でなければ罰しない と、刑法の条文で規定されています(第230条2項)。
つまり本当に「真実」であれば、亡くなった方の事実はいくら暴露しても、名誉毀損にはなりません。
ちなみになぜこんな法律になっているかというと、「歴史的な事実の検証」というポイントがあります。
有名な人で考えるとわかりやすいのですが、戦国武将などの歴史上の人物やときの総理大臣など、その人がどんなことをやって結果がどうだったかなど、様々な人が研究・検証して、その『事実』を発表しています。
ここに名誉毀損が成立することになれば、活発に活動していくことはできません。歴史から学びを得られなくなれば困るので、虚偽の場合に限定しているということになります。
特にその人の知名度や亡くなってからの年数などの制限はありません。死人に口なしではありますが、法的にも、死んでからはどんな『事実』を言われても文句を言えないので、できるだけ清く生きた方がいいですよね。
(ヒント)可能性のある犯罪: 名誉毀損罪
第5問
問題の解説
やっていることは「窃盗罪」にあたりますが、親族間であれば、この行為は犯罪となりません。
刑法では「法は家庭に入らず」の考えから、親子や配偶者、孫と祖父母など、親族間における一部の違法行為を処罰しない 規定を設けています。これは『親族相盗例』といい、「犯罪かどうか?」を判断する上での例外的なケースです。
具体的に親族間では、以下のような犯罪が免除されます。
・窃盗罪(第235条)
・詐欺罪(第246条)
・恐喝罪(第249条)
・横領罪(第252条)
・不動産侵奪罪(第235条の2)
・背任罪(第247条)
ちなみに親族ではない友人と一緒に親のお金を盗んだ場合、自分は犯罪になりませんが、友人の方は免除されないので罪に問われます。
(ヒント)可能性のある犯罪: 窃盗罪
第6問
問題の解説
最近だと「ご自由にご利用ください」といった形で、お客さん向けにコンセントを用意する喫茶店などもよくありますが、今回はおおよそ使っちゃいけないようなコンセントを勝手に使った場合。このケースでは「電気を窃盗した」ことにより、窃盗罪になります。
ここで一つ問題となっているのが、「電気は窃盗の対象になるのか?」です。
そもそも窃盗罪は例題でもご紹介しましたが、 「誰かの占有する財物を、その人の意思に反して移転させる」犯罪 となります。
この『財物』は原則として、「物理的な形のあるもの(有体物)」です。
つまり原則として電気は窃盗の対象にはならないのですが、刑法の条文で「電気は、財物とみなす(第245条)」と例外的な規定を設け、窃盗罪として処罰できるように しています。
「電気は窃盗の対象になるのか?」は過去に激しい論争がありましたが、「電気を好き放題に取られたら困るよね」ということで、今のような形に整備されています。
(ヒント)可能性のある犯罪: 窃盗罪
今回のクイズはここまで!
みなさん、何問正解したでしょうか?身近で「あれ、これって犯罪じゃない?」などの場面に出会ったら、ぜひ調べたりしてみてもおもしろいですよ!
さて、本日は「犯罪になる?ならない?」のクイズを出題いただきますが、その前に予習として、その考え方について教えていただきたいと思っております。