【きょうのギモン】車の水しぶきで服が汚れたのですが、クリーニング代とか請求できませんか?
弁護士
川原朋子
【きょうの弁護士】川原 朋子
青森県出身。「人を直接助ける仕事がしたい」と、働きながら夜間のロースクールに通い、司法試験に合格。弁護士に加え、メンタル心理カウンセラーなど多数の資格を持つ。現在、アディーレ法律事務所では、弁護士の立場からマーケティング施策などに従事。プライベートでは海外ドラマが好きで、なかでも好きなのは「刑事もの」や「弁護もの」。特に女性弁護士アリーが主人公の『アリーマイラブ』は、子どもの頃から何度も見返すほどのお気に入り。(埼玉弁護士会 所属)
ポイント① 不法行為による損害賠償請求ができるかも
車の運転手の不注意によって水しぶきが飛び、服が汚れた場合、不法行為にあたる可能性があります。
不法行為により損害を受けた場合には、加害者に対して損害賠償請求が可能です。
この場合の損害は通常、クリーニング代や、汚れが落ちずに服を破棄する場合のその服の時価(使用年数などを元に算出)となります。新しい洋服の代金まで請求することは難しいでしょう。
ポイント② 実際に請求することは難しい
しかし、実際に損害賠償を請求するのは難しい場合が多いです。
まず、車の運転手がその場で停車してくれれば良いのですが、走り去ってしまった場合、相手を特定するのが困難です。
車のナンバーを記憶したり撮影したりすることができれば所有者を調べる方法はありますが、とっさのことでは難しいでしょう。
さらに、相手を特定できたとしても、 相手が水しぶきをかけたことを否定した場合には、不法行為による損害を証明するための証拠が必要 です。
仮に証拠が揃っていたとしても、損害賠償請求には労力がかかります。
クリーニング代は、通常高くても1000円~2000円程度であり、証拠収集や相手特定にかける時間と労力を考えると、賠償額は極めて少額です。そのため、実際に請求する人は少ないと考えられます。
ポイント③ 交通違反も問えるが、証拠が必要
車の運転者には、ぬかるみや水たまりを通行するときに、汚水等を飛散させて他人に迷惑をかけないようにする義務があります (道路交通法71条1号)。 この規定に違反すると反則金の納付義務も定められています。
しかし、この「運転者の交通違反」を警察に相談する場合も、証拠が必要です。
このように、加害者の責任を問うのは難しいので、車に水しぶきをかけられそうな道路状況のときには、なるべく車道近くを歩かないなど、自衛策を講じていただければと思います。