【きょうのギモン】マンションの家賃値上げは、拒否できますか?
弁護士
川原朋子
【きょうの弁護士】川原 朋子
青森県出身。「人を直接助ける仕事がしたい」と、働きながら夜間のロースクールに通い、司法試験に合格。弁護士に加え、メンタル心理カウンセラーなど多数の資格を持つ。現在、アディーレ法律事務所では、弁護士の立場からマーケティング施策などに従事。プライベートでは海外ドラマが好きで、なかでも好きなのは「刑事もの」や「弁護もの」。特に女性弁護士アリーが主人公の『アリーマイラブ』は、子どもの頃から何度も見返すほどのお気に入り。(埼玉弁護士会 所属)
ポイント① 家賃の値上げは、原則双方の合意が必要
家賃の値上げは「賃貸借契約の変更」にあたるため、原則として貸主(大家)と借主(借りている人)の双方の合意が必要です。
そのため、 借主が拒否すれば、貸主が一方的に家賃を値上げすることはできません。
ただし、契約内容に「〇年ごとに自動的に〇%値上げする」といった文言が含まれている場合は注意が必要です。基本的にこのような条項は有効であり、拒否できない可能性が高いでしょう。
ただし、増額率が極端に高い場合などでは無効とされることもあります。
ポイント② 大家は増額を求めて訴訟をおこせる場合も
このように値上げには、原則として合意が必要であり、値上げを拒否されたからといって、大家が借主を訴えることはできません。
しかし、大家が「法律の根拠」をもって、値上げを請求でき、拒否されたら訴えることができるケースがあります。
具体的には、土地や建物の価格上昇、租税などの負担の増加やその他経済事情の変動、近隣の同種建物の賃借料と比較して、 家賃が不相当に低くなったときは、家主は法律に基づいて、増額請求できる のです(借地借家法32条1項)。
増額請求をしても合意ができない場合は、家主の訴えにより裁判所が最終的に判断します。
ポイント③ 値上げする理由や根拠を尋ねた上で、応じるか検討しよう
家賃の増額請求を受けて、話し合っても大家と家賃の折り合いがつかない場合、借主は自身で「相当と認める額」を支払うことができます(同法32条2項)。これは以前と同じ額でも、多少上乗せした額でも構いません。
ただし、裁判所が増額請求を認めた判決が確定すると、増額請求を受けた時から、支払いが足りない分について「年1割の利息」を追加して支払う必要があります(同法32条2項)。
つまり、家賃の増額請求に応じなかった場合、事情によっては、 裁判所により最終的に値上げが妥当とされるだけでなく、利息分の余分な支払いが発生する可能性がある のです。
値上げの打診を受けたら、値上げする理由や根拠などを尋ねたうえで、同意するのか拒否するのか、同意するとしても値上げ幅を下げてほしいと伝えるのかなど、検討するとよいでしょう。