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【きょうのギモン】黙秘権って何ですか?

弁護士

神野由貴


【きょうの弁護士】神野 由貴
税関職員の経歴を経て、弁護士に。アディーレ法律事務所にて、不貞慰謝料の請求における交渉・訴訟、また弁護士の視点からマーケティング施策などに携わる。プライベートでは、小学生の頃からの歴史好き。歴史ドラマやYouTube、書籍など、普段から様々な歴史コンテンツを楽しみ、時間ができれば、歴史的な名所にも足を運んでいる。(兵庫県弁護士会 所属)


ポイント① 黙秘権は、法律や憲法で保障された権利

「黙秘権を行使します(※)」

こうしたセリフを、ドラマなどで聞いたことのある方もいらっしゃるかもしれません。

黙秘権とは、刑事事件において被疑者や被告人が、「その意思に反して供述を強制されない権利」のことです。

つまり被疑者や被告人は、 取り調べや裁判などにおいて「言いたくないことは言わなくていい」と、法律や日本国憲法(第38条第1項)で保障されています。

(※)黙秘権を行使する際、「黙秘権を行使します」などと伝えなくても問題はありません。


ポイント② 誰しも公正な裁判を受ける権利がある

黙秘権に対して、「都合の悪いことは話さなくていいなんてずるい」「黙秘権を行使するなんて、罪を認めているのと同じではないか」などと感じる方もいるかもしれません。

しかし、日本では誰しも公正な裁判を受ける権利があり、それはたとえ罪を犯した(と疑いをかけられている)人であっても同様です。黙秘権は、そうした 公正な裁判を実現するために、自白の強要から個人を守る重要な権利となっています。

たとえば、自分にとって「ある事実が有利なのか不利なのか」を判断することは非常に難しいものです。弁護士でさえ、ある発言について後の裁判でどのように判断されるかを正確に予測することは困難な場合があります。

そのため、「無実なのだから、きっとわかってくれる」と、警察官や検察官に言われるがまま話した事実のなかに、あとあと自分にとって不利益になり得る事実が含まれていた、ということもあるでしょう。そうなれば、 冤罪という重大な人権侵害にもつながりかねません。

また、黙秘権は、その行使が認められているだけではなく、捜査機関が取調べをする際には、あらかじめ黙秘権について告知する義務があると法律で定められています(刑事訴訟法第198条2項)。