【きょうのギモン】友達の定期券を借りて使ったら、マズイって本当ですか?
弁護士
川原朋子
【きょうの弁護士】川原 朋子
青森県出身。「人を直接助ける仕事がしたい」と、働きながら夜間のロースクールに通い、司法試験に合格。弁護士に加え、メンタル心理カウンセラーなど多数の資格を持つ。現在、アディーレ法律事務所では、弁護士の立場からマーケティング施策などに従事。プライベートでは海外ドラマが好きで、なかでも好きなのは「刑事もの」や「弁護もの」。特に女性弁護士アリーが主人公の『アリーマイラブ』は、子どもの頃から何度も見返すほどのお気に入り。(埼玉弁護士会 所属)
ポイント① 犯罪が成立するおそれ
まず鉄道に乗車する際は、原則として「有効な乗車券」を利用しなければなりません。「有効な乗車券」なしに乗車した場合、『鉄道営業法29条1号』違反にあたります。
定期券の使用は、記名された本人しか認められません。そのため、他人の定期券は、その人の許可があっても「「有効な乗車券」とは認められません。
したがって、他人の定期券を借りて利用した場合、 「有効な乗車券」なしに乗車したとして、『鉄道営業法29条1号』違反として犯罪が成立するおそれ があります。
ポイント② 高額の割増賃金を請求されるおそれ
「有効な乗車券」なしに乗車した場合、鉄道事業者は「乗車区間の相当運賃に加えて、その2倍以内の割増運賃を請求できる」と定められています(鉄道営業法18条2項、鉄道運輸規程19条1項)。
「合計で3倍程度のお金を請求されるくらい、たいしたことない」と思うかもしれませんが、 定期券の不正利用の割増運賃は極めて高額になることがあります。
鉄道事業者は、それぞれ『旅客営業規則』でキップのルールを定めています。例えばJR東日本では、定期券の不正利用の割増賃金の場合、次のような計算を行います(JR東日本旅客営業規則265条1項)。
「定期券利用開始日から、毎日1往復したとして、定期券を不正利用して無効となった日までの普通運賃×3倍」
例えば、不正利用が「1000円の区間、定期利用開始日から3ヶ月目」であれば、請求額は次のようになります。
1000円×2(往復)×90日×3倍=54万円
このように、不正利用区間、定期利用開始日によっては、数十万円を請求されることも少なくありません。
ポイント③:定期券も無効になる
各社の旅客営業規則にもよりますが、通常、 定期乗車券を記名人以外の人が使用したときは、無効として回収 されます。
友人から借りた定期乗車券は、それ以降友人も使えなくなってしまいます。
このように友人や家族の定期券を借りて利用することは、かなりペナルティが重いので、やめた方がよいでしょう。