【きょうのギモン】「出世払い」で借りたお金は、出世しなかったら返さなくていいですか?
弁護士
神野由貴
【きょうの弁護士】神野 由貴
税関職員の経歴を経て、弁護士に。アディーレ法律事務所にて、不貞慰謝料の請求における交渉・訴訟、また弁護士の視点からマーケティング施策などに携わる。プライベートでは、小学生の頃からの歴史好き。歴史ドラマやYouTube、書籍など、普段から様々な歴史コンテンツを楽しみ、時間ができれば、歴史的な名所にも足を運んでいる。(兵庫県弁護士会 所属)
POINT① 大正時代、“出世払い問題” が裁判で争われた
「出世払いで借りたお金は、出世しなかったら返さなくていいのか?」
実は、この問題は大正時代に裁判で争われたことがあります!(大正4年3月24日大審院判決)
裁判でどのように判断されたかというと、 「出世しなくても借りたお金は返す義務がある」 。つまり、この判決によると、出世しなくてもお金は返さなければならないとなります。
POINT② 「出世しないこと」が決まったら、返さないといけない
さて、この判決内容を少し詳しく見てみると、裁判所は『出世払い』に関して、「当事者の合理的な意思を解釈すれば、 『出世したら返してもらうけど、出世しなかったら返さなくていい』なんて約束は、通常しないだろう 」といった解釈をしています。
つまり『出世払い』というのは、あくまでも「貸す側の厚意により、ある程度返済までの期限を猶予するにすぎない」ということになるのでしょう。
したがって、『出世払い』の約束は、 「出世するのかしないのかがはっきりした時点で、返済する」 という趣旨である、と解釈されているようです。
ちなみに、私が学生時代に授業でこの話を始めて聞いた際、「出世しないことが決まった瞬間っていつだよ!」と思った記憶があります(笑)。
もっとも、当事者の関係や契約の内容によっては、同じ『出世払い』でも、「出世することを条件に返済義務が発生する(出世しなければ返済しなくてもいい)内容の契約」であると解釈される余地はあるようです。
とはいえ、やはり借りたお金は、ちゃんと返したほうがよさそうですね…。