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【きょうのギモン】マッチングアプリの相手が、食事中に席を立って戻らなかったんですが、犯罪じゃないんですか?

弁護士

神野由貴


【きょうの弁護士】神野 由貴
税関職員の経歴を経て、弁護士に。アディーレ法律事務所にて、不貞慰謝料の請求における交渉・訴訟、また弁護士の視点からマーケティング施策などに携わる。プライベートでは、小学生の頃からの歴史好き。歴史ドラマやYouTube、書籍など、普段から様々な歴史コンテンツを楽しみ、時間ができれば、歴史的な名所にも足を運んでいる。(兵庫県弁護士会 所属)


ポイント① 相手には最初から支払う意思がなかった?

マッチングアプリで知り合った相手には、はなから食事代を支払う意思などなかった場合、つまり最初から途中で逃げてあなたに代金を全額支払わせるつもりだったにもかかわらず、あなたを欺いて食事を共にしたのであれば、『詐欺罪』が成立する可能性があります。

しかし、立証は非常に困難でしょう。

というのも、 相手が最初からいわゆる「食い逃げ」を目的としていたと証明することは難しい からです。

たとえば、「食事の途中でこれ以上一緒にいることが嫌になったから、勝手に帰った」といった場合です。このように言い訳されたら、反証はかなり厳しいといわざるを得ません。

もっとも、同じ人物が頻繁に同様の行為を繰り返していたことが判明したなどの場合であれば、詐欺罪が成立するといえる可能性もゼロではないでしょう。


ポイント② 負担した食事代を請求できる可能性はあるけど…

また、民事上の責任を問える可能性もあります。

たとえば、相手が勝手に店から立ち去った結果、あなたが食事代を全額負担せざるを得なくなった場合。不当利得や不法行為に基づいて、相手が食べた分の食事代をあとから請求できる可能性があります。

実際、マッチングアプリで出会った相手による「食い逃げ」被害は多発しているようです。ただし、こういった被害1件1件の金額は比較的少額であることが多く、マッチングアプリ上だけのつながりであれば、相手を特定できないことも多いと考えられるため、残念ながら警察に被害を申告しても立件は難しいかもしれません。