【きょうのギモン】”フキハラ”は法律違反になりませんか?
弁護士
神野由貴
【きょうの弁護士】神野 由貴
税関職員の経歴を経て、弁護士に。アディーレ法律事務所にて、不貞慰謝料の請求における交渉・訴訟、また弁護士の視点からマーケティング施策などに携わる。プライベートでは、小学生の頃からの歴史好き。歴史ドラマやYouTube、書籍など、普段から様々な歴史コンテンツを楽しみ、時間ができれば、歴史的な名所にも足を運んでいる。(兵庫県弁護士会 所属)
ポイント① フキハラが原因で損害が生じたかどうか
最近、新しく使われはじめている「フキハラ」という言葉。フキハラの定義には様々なものがありますが、ここでは、「あからさまに不機嫌な態度をとり、周囲に迷惑をかける行為」を指すことにします。
それでは、この行為が法律に違反するか、特に「民法上の不法行為に該当するか」について考えてみましょう。
民法には、以下のような定めがあります。
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。(第709条)
つまり、 自分の落ち度で「他人に何らかの損害を与えた場合、その損害を賠償する責任を負う」 ということになります。
フキハラにあてはめてみると、まず単なる「不機嫌な態度」自体が直接的な損害を生むことは少ないでしょう。
また、仮にフキハラの影響でストレスが生じ、実際に精神や身体に不調をきたしてしまったとしても、その不調が「特定の人物によるフキハラが原因である」とまで証明できる可能性は低いといえます。
ポイント② 具体的なフキハラ行為と、それによる損害を証明できれば、損害賠償も視野に入る
ただし単なる「不機嫌な態度」に終わらず、パワハラのような悪意を持った具体的な言動を伴う場合、「民法上の不法行為」にあたりうるでしょう。
そうした「不法行為」によって、損害を被った場合は、慰謝料などの損害賠償を請求できる可能性があります。
なお、企業には従業員が快適に働ける環境を提供する義務があり、フキハラが原因で職場環境が悪化したといえる場合には、企業もその責任を問われる可能性があります。
職場でのフキハラに苦痛を感じている場合など、なにかしらの対策を講じてもらえるよう、まず上司や社内の相談窓口に相談してみていただければと思います。