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【きょうのギモン】駅で「ぶつかりおじさん」に会いました。罪に問えませんか?

弁護士

川原朋子


【きょうの弁護士】川原 朋子
青森県出身。「人を直接助ける仕事がしたい」と、働きながら夜間のロースクールに通い、司法試験に合格。弁護士に加え、メンタル心理カウンセラーなど多数の資格を持つ。現在、アディーレ法律事務所では、弁護士の立場からマーケティング施策などに従事。プライベートでは海外ドラマが好きで、なかでも好きなのは「刑事もの」や「弁護もの」。特に女性弁護士アリーが主人公の『アリーマイラブ』は、子どもの頃から何度も見返すほどのお気に入り。(埼玉弁護士会 所属)


ポイント① 暴行罪や傷害罪が成立する可能性

わざと(故意に)人の身体にぶつかる行為は、『暴行罪』が成立します(刑法208条)。

『暴行罪』は、他人に「暴行」を加えた場合に成立する犯罪です。この「暴行」とは、身体に向けられた違法な有形力の行使を指し、実際に接触があったかは関係ありません。

つまり 故意に行われた “ぶつかり行為” は、寸前で避けて当たらなかったとしても、『暴行罪』にあたります。 『暴行罪』の罰則は、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金又は拘留もしくは科料です。

また、故意にぶつかられた結果、ケガをした場合には『傷害罪』が成立します(刑法204条)。傷害罪の罰則は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。

ちなみに故意ではなく、不注意で(過失により)ぶつかられた結果、ケガをした場合は『過失傷害罪』が成立します(刑法209条1項)。罰則は30万円以下の罰金です。


ポイント② 民事上の損害賠償請求も可能

さらに、ぶつかられたことでケガをしたり、持ち物が壊れたりした場合は、 治療費や修理代などについて損害賠償を請求できる可能性があります。

なお、“ぶつかり行為” といった不法行為を理由に、損害賠償を請求する際は、故意に限らず、過失によるぶつかり行為も対象です。


ポイント③ 被害届の提出も検討しよう

実際にぶつかりおじさんに対して、刑事や民事で責任を追及するなら、「実際にぶつかり行為があった」ことなどを証明する必要があります。また本人が立ち去った後なら、「人物の特定」も必要となるでしょう。

少しハードルが高いようにも思えますが、駅は防犯カメラや目撃者の存在によって、証拠の確保や人物特定が期待できる環境だといえます。被害を受けた際は、警察へ被害届を提出することを検討してもいいでしょう。