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【きょうのギモン】執行猶予ってなんですか?

弁護士

神野由貴


【きょうの弁護士】神野 由貴
税関職員の経歴を経て、弁護士に。アディーレ法律事務所にて、不貞慰謝料の請求における交渉・訴訟、また弁護士の視点からマーケティング施策などに携わる。プライベートでは、小学生の頃からの歴史好き。歴史ドラマやYouTube、書籍など、普段から様々な歴史コンテンツを楽しみ、時間ができれば、歴史的な名所にも足を運んでいる。(兵庫県弁護士会 所属)


通常、「懲役1年6ヵ月」のように実刑判決が言い渡されると、刑務所に収容されるなど、ただちに刑に服することになります。

この 執行を「一定期間先送りされる制度」が執行猶予 です。判決では「懲役1年6ヵ月、執行猶予3年」といった形で裁判所から言い渡されます。

この場合、「3年間、懲役刑の執行が先送り」にされ、執行猶予が取り消されることなく猶予期間が経過すれば、実際に刑務所に入ることはありません(前科はつきます)。

(※)猶予期間に再び犯罪を行った場合など、執行猶予が取り消されます。


執行猶予付きの判決が出されるには、一定の条件があります。

まず執行猶予がつけられるのは、 懲役・禁固刑であれば「3年以下の懲役・禁錮(*)」、罰金刑であれば「50万円以下の罰金」で刑の言い渡しを受けた場合 です。

さらに、次のいずれかの条件を満たす者である必要があります。

・前に禁錮以上の刑を受けたことがない者

・禁錮以上の刑から5年以内に禁錮以上の刑を受けたことがない者

したがって、法律で定められている最低の刑罰が「懲役3年を超える罪の重い犯罪(例:殺人、強盗など)」の場合、刑を軽減する事情がない限り、裁判所が執行猶予付きの判決をすることはできません。

また、執行猶予をつけられる条件を満たしているからといって、必ずしも執行猶予がつくとは限らないのでご注意ください。

(※)2022年6月に懲役と禁錮を廃止し「拘禁刑」に一本化する改正刑法が成立しました。改正刑法は2025年6月1日から施行されます。