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【きょうのギモン】明らかにうつされた風邪で仕事に大きな支障が出たのですが、損害賠償など請求できませんか?

弁護士

神野由貴


【きょうの弁護士】神野 由貴
税関職員の経歴を経て、弁護士に。アディーレ法律事務所にて、不貞慰謝料の請求における交渉・訴訟、また弁護士の視点からマーケティング施策などに携わる。プライベートでは、小学生の頃からの歴史好き。歴史ドラマやYouTube、書籍など、普段から様々な歴史コンテンツを楽しみ、時間ができれば、歴史的な名所にも足を運んでいる。(兵庫県弁護士会 所属)


風邪をひいて仕事に大きな支障が出た場合、その原因に思い当たる節があるならば、原因となったと思われる人に何らかの請求をしたいと考えるかもしれません。

しかし、損害賠償を請求するためには、いくつかの条件があり、そのなかで今回もっとも問題となるのが 「因果関係」 です。


法律上、他人に対して損害賠償を求めるためには、 「損害」が生じたこと、「加害行為」があったこと、それらの間に「因果関係」があること などを証明しなければならないのが原則です。

しかし、風邪の感染経路は非常に複雑で、日常生活において誰から感染したのかを特定することは極めて難しいものです。

たとえば、職場で同僚が風邪をひいていて、その後自分も風邪をひいたとしても、その同僚が直接の原因であると断定することはできないでしょう。

風邪は細菌やウイルスが原因で広がるものであり、その感染力や潜伏期間もさまざまであるうえ、風邪の症状が出るまでの期間も個人差があり、その間に接触した多くの人々から感染した可能性があるからです。


ほかにも、公共の場や通勤中の感染も考えられるため、一人の特定の人物が原因であると証明することは不可能と考えられます。

因果関係を証明できない場合、損害賠償を請求することは基本的にできません。

したがって、他人から風邪をうつされたと感じたとしても、その人に対して慰謝料などの損害賠償を請求することは、現実的ではないでしょう。