【きょうのギモン】落とし物を届けてもらって、「お礼」しないとどうなりますか?
弁護士
川原朋子
【きょうの弁護士】川原 朋子
青森県出身。「人を直接助ける仕事がしたい」と、働きながら夜間のロースクールに通い、司法試験に合格。弁護士に加え、メンタル心理カウンセラーなど多数の資格を持つ。現在、アディーレ法律事務所では、弁護士の立場からマーケティング施策などに従事。プライベートでは海外ドラマが好きで、なかでも好きなのは「刑事もの」や「弁護もの」。特に女性弁護士アリーが主人公の『アリーマイラブ』は、子どもの頃から何度も見返すほどのお気に入り。(埼玉弁護士会 所属)
落とし物の取り扱いについては、逸失物法でルールが定められています。たとえば落とし物を拾った人は、落とし主が分かっている場合は落とし主にすぐに返還する義務があり、落とし主が分からない場合には警察署に提出する義務があります。
一方で落とし主は、落とし物の返還を受けたら、「報労金」を支払わなければなりません。
具体的には、拾ってくれた人に対して、落とし物の5%から20%以下に相当する額の支払いが義務づけられています。
現金1万円が入った財布を拾ってもらったケースなら、財布の価値がないものとすると、500円から2,000円の報労金を支払うことになる計算です。
ただし、落とし物が返還されて1ケ月経過した後、拾った人は報労金を請求できなくなる(権利を失う)ため注意しましょう。
拾ってくれた人にお礼を渡そうと思っても、なかには報労金の受け取りを辞退される場合もあります。
拾ってくれた人に報労金を受け取る義務まではありませんので、辞退されたらお礼を渡す必要はありません。
ただし報労金は辞退されても、お茶やお菓子といったお礼の品なら、受け取ってもらえる場合もあります。 どうしてもお礼を渡したいという方は、報労金に相当する額でお礼の品を準備し、渡してみてもいいかもしれません。
法律以前に、「拾ってもらったらお礼を言う」というのは社会的なマナーです。
お礼も言わない、報労金も支払わないとなると、拾った人の善意を無下にすることになりかねません。 実際に、報労金を支払うよう裁判を起こされたケースもあります。
「面倒くさいな…」「お金が惜しいな…」などと考えてしまうこともあるかもしれませんが、適切なお礼をすることを心掛けていただければと思います。