転売で捕まることってある?違法になるケースについて、弁護士に聞いてみた!
弁護士
川原朋子
こんにちは、アソベン編集部です。
本日、弁護士に聞いてみる内容がこちら!
「そもそも転売って違法なの??」
「副業でやっていると、捕まることってある??」
「どういうときに違法になる?注意すべきポイントは??」
などなど、詳しく教えてもらいます!
転売は違法なのか?について教えてくれる弁護士
【きょうの弁護士】川原 朋子
青森県出身。「人を直接助ける仕事がしたい」と、働きながら夜間のロースクールに通い、司法試験に合格。弁護士に加え、メンタル心理カウンセラーなど多数の資格を持つ。現在、アディーレ法律事務所では、弁護士の立場からマーケティング施策などに従事。プライベートでは海外ドラマが好きで、なかでも好きなのは「刑事もの」や「弁護もの」。特に女性弁護士アリーが主人公の『アリーマイラブ』は、子どもの頃から何度も見返すほどのお気に入り。(埼玉弁護士会 所属)
原則、転売は合法で逮捕もされない
転売は一般的に、「買った商品を、さらに他に販売すること」という意味で使われています。
最近ではフリマアプリなどの普及もあり、多くの人が転売によって商品をやり取りするようになりました。
そうした経済活動の一部として認知も広がる一方、「転売ヤー」といった言葉とともに、批判的な声も多くなっています。
では法律上、転売はどういった位置づけとなっているのでしょうか。
結論として、転売自体は基本的に合法です。
ほとんどの商品において、 転売は自由な経済活動として許容されており、法的な規制はありません。
例外的に一部の転売は違法・犯罪とされる
しかし例外的に、 一部の転売行為は法律や条例で規制され、違法となることがあります。
転売を無制限に認めてしまうと、他の利益を侵害することにつながりかねません。
そうした利益を守る観点から、一部の転売は法律や条例によって規制されています。
例えば、街でよく見かける買取業者ですが、不要なものを買い取ってもらえるので大変便利ですし、持続可能な社会の実現という意味でも、廃棄物を減らしてリユースを推進できるので、大変意義のある事業といえそうです。
しかし一方で、窃盗犯が盗んだ品を買取業者に売却することで、被害者の被害回復が困難になったり、換金を容易にすることで犯罪を助長してしまったりするおそれもあります。
そこで法律では、 一定の「古物」を売買するといった「古物営業」を行う場合、事前に許可を得ることを必要としています。 許可のない「古物営業」を犯罪と定め、転売を規制しているのです。
転売が犯罪となるケース
副業で転売してみたい(している)といった方もいらっしゃると思いますが、このように一部の転売は法律や条例によって規制されています。
行き当たりばったりではじめてしまった結果、違法行為として犯罪となる可能性もある ため注意が必要です。
それでは具体的に、どういった転売行為が犯罪となる可能性があるのでしょうか。
犯罪となる可能性がある主なケースは以下の6つです。
(1)古物営業法違反
(2)迷惑防止条例違反
(3)チケット不正転売禁止法違反
(4)詐欺罪
(5)酒税法違反
(6)医薬品医療機器等法違反
順に説明します。
(1)古物営業法違反:無許可での転売業
「古物」を売買する営業をするには、都道府県公安委員会の許可が必要です(古物営業法2条2項1項、3条)。
「古物」には、次のものが含まれます(同法2条1項)
・ 1度使用された物品
・ 未使用の物品で使用するために取引されたもの
・ これらの物品に幾分の手入れをしたもの
具体的には、次の13種類に分けられています(古物営業法施行規則2条)。
① 美術品類
② 衣類
③ 時計・宝飾品類
④ 自動車
⑤ 自動二輪車・原動機付自転車
⑥ 自転車類
⑦ 写真帰塁
⑧ 自動機器類
⑨ 機械工具類
⑩ 道具類
⑪ 皮革・ゴム製品類
⑫ 書籍
⑬ 金券類
例えば、中古の衣類を仕入れて転売することを営業として行う場合には、「古物営業」の許可が必要となります。
許可を得ずに営業した場合の罰則は、「3年以下の懲役又は10万円以下の罰金」です(同法31条1項)。
ただし、取り扱うのが「古物」であっても、個人的に不要になった物を時折売却する程度であれば、通常「営業」とは言えないため、許可は不要です。この場合、許可なしに「古物」を売買しても、『古物営業法』違反で犯罪となることはありません。
しかし、大量の「古物」を、継続的に売買する場合には、許可なく「古物営業」を営んでいるとされるおそれがあります。
最悪の場合、『古物営業法』違反で捜査・逮捕される、という可能性もゼロではありません。
副業などで転売を始めようと考えたら、 『古物商許可』が必要かどうか必ず検討し、必要であれば許可を得てから営業する ようにしましょう。
(2)迷惑防止条例違反:公共の場所での転売行為
公共の場所での無許可の転売行為=いわゆるダフ屋行為は、各自治体の迷惑防止条例に違反して処罰される可能性があります。
条例の名称は、各自治体によって異なり、東京都では「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」で規制しています。
(2条2項)
何人も、転売する目的で得た乗車券等を、公共の場所又は公共の乗物において、不特定の者に、売り、又はうろつき、人につきまとい、人に呼び掛け、ビラその他の文書図画を配り、若しくは乗車券等を展示して売ろうとしてはならない。
例えば、イベント会場周辺で、「当日チケットあるよ~」と転売している人を見たことはないでしょうか。
このように、 転売目的で得た入場券を、公共の場所又は公共の乗り物で売る・売ろうとすることは、ダフ屋行為として処罰されるおそれがあります。
(3)チケット不正転売禁止法違反:特定興行入場券の不正転売
チケットを買い占めて高値で転売するような行為が社会問題となり、2019年6月、特定のチケットについて転売行為を規制する『特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律(チケット不正転売禁止法)』が施行されました。
この法律により、 『特定興行入場券』を定価以上で転売することは、「不正転売」の犯罪として処罰されることになりました。
転売するだけでなく、不正転売を目的として『特定興行入場券』を譲り受ける行為も処罰対象となります。
『特定興行入場券』とは、映画、演劇、演芸、音楽、舞踊その他の芸術及び芸能又はスポーツのチケットで、不特定又は多数の者に販売され、次の条件をすべて満たすものをいいます(同法2条3項)。
① 興行主等が、チケットの販売に際し、興行主の同意のない有償譲渡を禁止する旨を明示し、かつ、その旨をチケットの券面に表示させたものであること
② 興行が行われる特定の日時及び場所、入場資格者又は座席が指定されたものであること。
③ 興行主等が、チケットの販売に際し、次に掲げる区分に応じた事項を確認する措置を講じ、かつ、その旨をチケットの券面に表示させたものであること
1)入場資格者が指定されたチケット:入場資格者の氏名及び連絡先(電話番号、電子メールアドレス等)
2)座席が指定されたチケット:購入者の氏名及び連絡先
また、「不正転売」とは、興行主の事前の同意を得ない『特定興行入場券』の業として行う有償譲渡であって、興行主等の当該『特定興行入場券』の販売価格を超える価格をその販売価格とするものをいいます。
違反した場合の罰則は、「1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、またはその両方」です(同法9条1項)。
定価より高い値段でチケットを転売することが、すべて禁止されるわけではありません。「業として」行わない場合には、処罰対象にはなりません。
つまり、 「体調不良でいけないから売却したい」というような理由で売却するようなケースでは、『特定興行入場券』を売却しても、不正転売にはあたらない のです。
(4)詐欺罪:騙して商品入手
売主が「転売禁止」と明示している商品について、 転売目的があるのにその目的を隠したうえで購入すると、商品をだましとったとして、『詐欺罪』が成立する可能性 があります(刑法246条1項)。
詐欺罪の罰則は「10年以下の懲役」です。
転売禁止の商品を、転売目的で購入することはやめましょう。
(5)酒税法違反:免許なく酒類を販売する
酒類の販売業をしようとする人は、販売業を行う「販売場を所轄する税務署長の免許」を受けなければなりません(酒税法9条1項)。
免許なしで酒類の販売業を行うと、「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」が科される可能性 があります(同法56条1項1号)
フリマアプリでは、酒類を通信販売するのに必要な許認可を取得し、許可証の画像を提出すれば、酒類について利用可能としているところもあります。
参考:酒税法|e-gov
(6)医薬品医療機器等法違反|医薬品を許可なく販売するなど
また、 個人輸入した化粧品をフリマアプリなどで販売することは、1回だけであっても、『医薬品医療機器等法』に違反するおそれ があります(同法62条、55条2項)。
海外製の化粧品の個人輸入は、自己使用の目的に限り認められており、転売は禁止されているためです。
また、 許可なく医薬品や医療機器を販売することも、同法に違反するおそれ があります。例えば、市販薬を転売したり、処方された薬を転売することは禁止されています(同法24条1項)。
罰則は、「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金」です(同法84条)
大手フリマアプリでは、出品が禁止されているものについてのルールを設けています。医薬品や医療機器は出品禁止とされることが多いようです。
犯罪が成立するすべての転売をここで紹介することはできませんが、他にも、ブランド品のコピーを販売すれば商標法違反、映画をコピーしたDVDを販売すれば著作権法違反となるおそれがあります。
犯罪とされると、捜査機関に最悪逮捕・起訴されるおそれもあります。 法律上、必要な許可などは事前に取得するようにしましょう。
もし副業などで転売をしようと思ったら、まず、 取り扱いたい商品について、規制する法律がないかを探しましょう。
規制されているものであれば、その法律上必要な許可や守るべきルールは何かなどを調査します。必要であれば、所轄する官庁などに問い合わせます。
適切に法令を遵守することで、安全かつ合法的に転売ビジネスを行うことができるはずです。
実際に転売で処罰された具体的な事例
ここからは実際に、転売で処罰された具体的な事例を紹介します。
(1)チケットの不正転売罪
チケット(特定興行入場券)の不正転売等の罪で起訴され、「懲役1年6ケ月及び罰金30万円」という有罪判決を受けた事例を紹介します(2020年9月4日大阪地方裁判所判決)。
・ アイドルグループの公演を良い席で見たいと考え、転売されているチケットを複数入手し、偽造身分証明書を利用して公演に入場していた。
・ 残ったチケットを不正転売し、得た利益をチケットの購入代金に充てていた。
不正転売だけではなく、偽造身分証明書を作成して行使したことから、『有印私文書偽造罪』『偽造有印私文書行使罪』も成立しています。
(2)チケットを騙して入手した詐欺罪
『チケット不正転売禁止法』が施行される前も、チケットの高額転売は社会問題化していました。
しかし直接転売を取り締まる法律がなかったため、捜査機関は、チケットの転売目的を隠してチケットを購入したことを『詐欺罪』として立件していました。
営利目的のうえ、転売目的を隠し、チケットを騙して入手したとして、『詐欺罪』等の罪で起訴され、「懲役2年6ケ月」という有罪判決を受けた事例を紹介します(2017年9月22日神戸地方裁判所判決)。
・ 営利目的での転売を禁止されているコンサートチケットについて、営利目的での転売意思を有しているのに、これがないかのように装って販売会社にチケットの購入を申し込み、電子チケット及び紙チケットを騙しとった。
・ 自分のみならず,交際相手や親族等の名義を利用し、コンサートチケットの転売を多数繰り返しており、犯行は常習的かつ職業的。
裁判所は、「電子チケットを表示するスマートフォンを貸し出す形で転売し、販売会社の防止策をかいくぐる巧妙な犯行」と指摘し、責任は重大と判断しました。
まとめ
転売自体は基本的に合法ですが、一定の場合には、違法・犯罪となる可能性があります。
安全に転売を行うためには、法律や条例などの規制を十分に理解し、必要であれば適切な許可を取得することが重要です。
もし副業などで転売を考えている方は、法令を遵守して転売活動を行っていただければと思います。
【補足解説】