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名誉毀損に時効はある?対処法や注意点など弁護士に聞いてみた!

弁護士

相原彩香

こんにちは、アソベン編集部です。

本日、弁護士に聞いてみる内容がこちら!

「名誉毀損に時効ってある??」
「どんな言葉が名誉毀損になる??」
「名誉毀損をされたらどうする??」

などなど、詳しく教えてもらいます!

名誉毀損に時効はあるのか教えてくれる弁護士

【本日の弁護士】相原 彩香
一橋大学法科大学院を経て、弁護士に。現在はアディーレ法律事務所にて、主に「法律記事ライター」として、「日常のトラブルや悩み」の解決につながる、法律記事の執筆を手掛ける。月に一度は旅行に行くほどの旅行好き。


名誉毀損の時効はいつまで?

SNSなどを通じて、気軽に誰もが公に発信できるようになるなか、「名誉毀損」という言葉を耳にする機会も増えました。

名誉毀損は簡単にいうと、「他人の名誉を傷つける(社会的評価を低下させる)行為」です。

名誉毀損をされた場合、相手に「刑事の責任(刑事罰)」と「民事の責任(慰謝料など)」を負わせることができます。

ただし、それぞれに時効があり、 時効を過ぎると、こうした責任を負わせることはできません。

その具体的な期間について、刑事と民事に分けて紹介します。


(1)刑事の時効はいつまで?

「名誉毀損」行為が行われた場合、具体的には『名誉毀損罪』が成立する可能性があります。

【名誉毀損罪】
公然と事実を摘示し、他人の名誉を傷つけた(社会的評価を低下させた)ときに成立する犯罪


※罰則は「3年以下の懲役もしくは禁錮、または50万円以下の罰金」(2025年、懲役刑・禁錮刑は廃止され拘禁刑に一本化されます)

『名誉毀損罪』には、以下のような時効があります。

・ 名誉毀損の時効(刑事):
犯罪行為が終わったときから3年

例えば、SNS上の投稿であれば、投稿をされたときから3年です。

この期間を過ぎると、『名誉毀損罪』として相手に責任を負わせることができなくなります。

また、『名誉毀損罪』として相手に責任を負わせる場合、「警察や検察に対する被害者の告訴(被害者の申告)」が必要です。

しかし、その被害者の「告訴(被害者の申告)ができる期間」にも制限があります。

・ 名誉毀損の告訴期間:
犯人を知った日から6か月以内

つまり時効の3年が経過していなくても、 犯人を知った日から6か月が過ぎると、警察や検察に告訴(被害者の申告)することはできなくなります。

警察や検察への告訴がないと、刑事上の責任を負わせられません。


(2)民事の時効はいつまで?

名誉毀損で民事上の責任を負わせる(慰謝料請求や名誉回復を求める請求)場合、以下のような時効があります。

・ 名誉毀損の時効(民事):
「損害および加害者を知ったときから3年間」もしくは「不法行為の時から20年間」のどちらか短い方

例えば、匿名掲示板で 「書き込みをした人の名前や住所」などを突き止めてから3年経つと、 裁判所で慰謝料請求や名誉回復を求める請求を起こすことができません。

一方で、書き込みをした人がわからないままでも、 書き込みがあったときから20年経つと、 慰謝料請求や名誉回復を求める請求を起こせなくなります。


何を言われたら『名誉毀損罪』になる?ケース別で紹介

「名誉毀損」と一口で言っても、様々なケースが存在します。

どういった場合に、『名誉毀損罪』として刑事上の責任を問えるのでしょうか。具体的な言葉とともに、紹介します。


(1)「○○さんは前科持ちだ」とばらされた

「○○さんは前科持ちだ」とバラされた場合、社会的評価を低下させる行為として、『名誉毀損罪』に当たる可能性が高いでしょう。

『名誉毀損罪』は、 内容が真実かウソかを問いません。 仮に、内容が真実であったとしても『名誉毀損罪』は成立します。


(2)SNS上で「△△さんは不倫をしている」と書かれた

SNS上で「△△さんは不倫をしている」と書かれたことは、『名誉毀損罪』に当たる可能性が高いでしょう。

『名誉毀損罪』に当たるためには、多くの人の目に触れる状態にあることが必要です。

SNS上の投稿は多くの人の目に触れることになる ため、『名誉毀損罪』に当たります。

仮に、SNSの投稿を特定のフォロワーにしか見られないようにしていた場合でも、そのフォロワーから不特定の多数人に伝わる可能性がある場合には、『名誉毀損罪』となる可能性が高いといえます。


(3)人前で「キモい」「ブス」と言われた

人前で「キモい」「ブス」と言われたことは、『名誉毀損罪』には当たりません。

『名誉毀損罪』に当たるためには、具体的な事実の適示が必要です。 「キモい」「ブス」は具体的な事実ではない ので、『名誉毀損罪』にはなりません。

しかし、具体的な事実の適示がなくても、「キモい」「ブス」は人を侮辱する言葉です。

そのため『侮辱罪』が成立する可能性は高いでしょう。

【侮辱罪】
事実の適示はなしに、公然と他人を侮辱したときに成立する犯罪


※罰則は「1年以下の懲役もしくは禁錮、もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料」

ちなみに刑事と民事では、「名誉毀損」の範囲に違いがあります。

例えば、慰謝料請求や名誉回復を求める請求を行う場合には、『名誉毀損罪』に当たる行為も『侮辱罪』に当たる行為も、広く「名誉毀損」と捉えられています。


(4)SNS上で実名が伏せられた状態で悪口を書かれた

あだ名やイニシャルなど、実名が伏せられた状態で悪口(社会的評価を低下させる言葉)を書かれた場合、 第三者から見てその対象が特定できれば『名誉毀損罪』に当たる可能性が高い といえます。

例えば、「同じ職場のSさんが会社のお金を着服している」などと投稿された場合を考えてみましょう。

この場合、同じ職場で「Sさん」に当てはまる人が1人しかいなければ、第三者から見てSさんが誰かは明らかですので、「名誉毀損罪」に当たる可能性が高いといえます。

一方で、第三者から見て悪口の対象者が特定できない場合、『名誉毀損罪』には当たりません。


(5)政治家の汚職が週刊誌で報道された

政治家の汚職が週刊誌で報道されたことは、その汚職が 確実な資料や根拠をもとに報じられた場合、『名誉毀損罪』として罰せられない可能性が高い でしょう。

実は、「名誉毀損」に当たる行為でも、次の場合には罰しないとされているのです。

① 公共の利害に関する事実である
② 公益目的がある
③ その事実が真実であることを証明したとき、もしくはそれが真実だと誤信したことについて確実な資料・根拠に照らして相当な理由があるとき

政治家の汚職は「公共の利害に関する事実」です。

政治家の汚職を報道したことは「公益目的」といえますから、確実な資料や根拠をもとに報道された場合には、『名誉毀損罪』として罰せられない可能性が高いといえます。


名誉毀損をされたら、どうすればいい?

名誉毀損をされた場合、次の3つの手段をとることができます。

(1) 刑事上の責任を求める
(2) 慰謝料を請求する
(3) 名誉を回復する措置を求める請求をする

それぞれ見ていきましょう。


(1)刑事上の責任を求める

名誉毀損をされた被害者は、『名誉毀損罪』として、加害者に対し、刑事上の責任を負うように求めることができます。

ただし、『名誉毀損罪』は「親告罪(被害者からの申告が必要な犯罪)」です。

加害者に刑事罰を科すためには、被害者から警察への被害の申告が必要になります。


(2)慰謝料を請求する

名誉毀損をされた場合、加害者に対し慰謝料を請求することができます。

慰謝料の相場は 個人の名誉毀損で10万円から50万円程度、企業の名誉毀損であれば50万円から100万円程度 です。

ただし、この相場はあくまでも裁判上での相場です。示談交渉では相場を超えた金額となることもあります。


(3)名誉を回復する措置を求める請求をする

名誉毀損をされた場合、名誉を回復する措置を求める請求をすることができます。

例えば、名誉毀損をした加害者から被害者に対する「謝罪文や名誉毀損した記事の取消訂正文」を掲載するように求めることができます。



ネット上で名誉毀損をされた場合の注意点とは?

最後に、ネット上での名誉毀損の注意点を紹介します。

ネット上での名誉毀損は、口頭で言われた場合と違い「加害者がわからない」「投稿などが残ってしまう」という問題があるのです。


(1)加害者を特定する必要がある

名誉毀損で刑事上もしくは民事上の責任を負わせたい場合、加害者を特定する必要があります。

警察が捜査してくれればいいですが、警察が捜査してくれない場合には、自身で発信者を特定しなければなりません。

自身で発信者を特定する場合は、プロバイダに対し「発信者情報開示請求」をすることで加害者の特定ができます。


(2)ログが消される可能性がある

加害者の特定に必要なログは、およそ3~6か月ほどで消えてしまいます。

匿名掲示板などで名誉毀損をされた場合、加害者を特定するには投稿された日から、すぐに行動を起こした方がいいでしょう。


(3)ネット上の書き込みの削除請求ができる

名誉毀損に当たる投稿を削除したい場合、本人、ウェブサイト管理者やSNS運営会社などに対して「削除請求」が可能です。

まず、誰が投稿したかわかっている場合には、投稿した本人に削除請求できます。

匿名の投稿を削除したい場合には、名誉毀損に当たる投稿が掲載されているサイトの 「削除申請のフォーム」で削除申請 を行いましょう。

削除申請のフォームがない場合、ウェブサイト管理者またはSNS運営会社に「削除請求の依頼書」を送ることができます。

ウェブサイト管理者やSNS運営会社が削除を行わない場合には、裁判所に対し削除を求める仮処分の申立てを行うことも可能です。

この申立てが認められると、裁判所からウェブサイト管理者やSNS運営会社に対し、名誉毀損に当たる投稿の書き込みを削除するように命令してもらうことができます。


まとめ

名誉毀損に遭ったら、「刑事上の責任を求める(名誉毀損罪など)」「民事上の責任を求める(慰謝料請求や名誉回復を求める請求)」ことが可能です。

ただし、名誉毀損には次のとおり時効があります。

・名誉毀損の時効(刑事):
犯罪行為が終わったときから3年
[犯人を知った日から6か月以内に告訴(被害者の申告)が必要]

・名誉毀損の時効(民事):
「損害および加害者を知ったときから3年間」もしくは「不法行為の時から20年間」のどちらか短い方

時効を過ぎれば、刑事や民事で責任を負わせることはできなくなります。名誉毀損の被害を受けた場合、早めに行動するのがよいでしょう。