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街は法律違反だらけ?!弁護士が気になる「街で見かける法律違反」を聞いてみよう!

アソベン編集部

おち

こんにちは、アソベン編集部の越智です。

さて早速ですが、みなさんは、こんな『弁護士あるある』をご存じでしょうか?



弁護士といえば、法律の専門家。とはいえ仕事とは関係ないプライベートの場でも、ホントに “法律違反が気になりがち” なのか?!

なんといっても私たち、「弁護士の “リアルな姿” 」をみなさんに伝えていく、をモットーとするアソベン。

今日はこの『あるある』が本当なのか。実際に弁護士に聞いてみようと思います!


「気になりがち」か聞いてみたのは、こちらの弁護士!

坂本 亮介(弁護士)
福岡県出身。同志社大学法科大学院を卒業後、弁護士に。主に男女問題に関わる慰謝料請求などの案件に携わる。プライベートでは高校まで野球に打ち込み、大学では総合格闘技をはじめるなど、スポーツマン。現在もジムに通い、体を鍛えている。趣味はお城や寺社仏閣などの史跡めぐりで、特に『新選組』好き。京都における『新選組』関連の施設や史跡は、学生時代にほぼ制覇した。第一東京弁護士会所属。


おち

早速ですが、やっぱり弁護士はプライベートでも「法律違反が気になりがち」なんでしょうか?

坂本弁護士

「気になりがち」ではあると思いますよ。



おち

おお。

坂本弁護士

僕もそんなに意識してるわけじゃないですけど、ふと見かけたことに「これって法的にどうなんだろ?」とか、ちょこちょこ気になってる気がします。

おち

なるほどなるほど。


「パッとわからないケースは、該当する法律を調べてみたり、同期の弁護士に「どう思う?」みたいに議論したりすることもありますね」


坂本弁護士

ある意味で、「職業病」みたいなところもあるかもしれないですね。

おち

「職業病」?

坂本弁護士

他の職業でも、その仕事特有の習慣とかクセとかってあると思うんですけど、普段からなにかが気になったりとか。

おち

たしかに、いちライターとしては、言葉とか文章はなんか気になっちゃいますね。街の広告とか注意書きとか。



坂本弁護士

それと、同じようなところがあるかもしれないですね。普段から法律を使って仕事をしているので、プライベートでも法律への感度が高くなっているのかなと。

おち

納得です。

坂本弁護士

ただ仕事とプライベートをきっちり分けて、プライベートでは「そういうのは考えない」と決めている人もいるみたいです。

逆に気になっちゃうから、そうやって線引きしてる人もいるかもしれないですが(笑)。

おち

まあ「弁護士」とはいえ、いろんなスタンスの人がいるってことですね。

坂本弁護士

そうですね。



おち

では、この『弁護士あるある』は、「ホント」ということでよろしいでしょうか?

坂本弁護士

まあ、いいんじゃないでしょうか。

おち

ありがとうございます。それではみなさん、



ということで、よろしくお願いします!



弁護士が気になる「街で見かける法律違反」3選

おち

さて『あるある』の検証はできたんですが、せっかくなので、普段の生活でどんな法律違反が気になっているのか教えてもらいたいです。

坂本弁護士

はい。

おち

特に普段街を歩いていて法律違反を見かけることもあるんじゃないかと思うんですが、弁護士はこういう 「街で見かける法律違反」 として、どんなのが気になるんですかね?



坂本弁護士

人それぞれだとは思いますが、個人的にはよく目にしがちな「法律違反」が気になります。

おち

ほう。

坂本弁護士

街の風景として見慣れているんだけど、厳密には「法律違反」というものはけっこうあって。個人的に気になっている3つをご紹介できればと思っています。

おち

はい、よろしくお願いします!



客引き


坂本弁護士

繁華街なんかで『客引き』はよく見かけると思うんですが、これは法律違反にあたるケースが多いですね。

おち

たしかに「客引きにはついていかない!」とか、よく注意を促されてるイメージ。

坂本弁護士

この『客引き』を規制しているのが、以下の法律(条例)です。

・風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)
・各自治体の迷惑防止条例
・各自治体の客引き防止条例

まず『風営法』という法律で、キャバクラやホストクラブ、スナックなどの「風俗営業」を行う店舗を規制しています。

加えて、それに該当しない飲食店などにおいても、「客引きはやらないように」と、各自治体が『迷惑防止条例』や『客引き防止条例』で規制を設けている形です。



おち

『客引き』といっても、しつこくついてくる風俗店のキャッチだったり、「お席空いてます」みたいに、飲食店の従業員が店前で声かけるだけだったり、いろんな形をイメージするんですが、こういうのは一切ダメって感じなんですかね?

坂本弁護士

「お店に勧誘する行為」が、一切ダメというわけではないですね。

たとえば東京都の迷惑防止条例では、進路に立ちふさがったり、つきまとったりと、「執ような客引き」を禁じています。

そのため飲食店の従業員が、店前で「お席空いてます」と声をかけるなど、単なる『呼び込み行為』であれば、迷惑防止条例違反にはあたらないと考えられます。

おち

なるほど。

坂本弁護士

一方で『風営法』では、「客引きをすること」自体を禁止しています。

なので厳密にいうと、キャバクラやホストクラブをはじめ『風営法』の規制対象の店舗は、お店に勧誘するために 「声をかける」だけでも、法律違反となる可能性 はありますね。



おち

実際に捕まった場合、罰則とかはどんな感じなんですか?

坂本弁護士

たとえば『風営法』では、 「懲役6か月もしくは100万円以下の罰金(またはその両方)」 と罰則が規定されています。

それに該当しない店舗については、各都道府県ごとで定めていますが、東京都の場合であれば、

・(客引きをした人)50万円以下の罰金または拘留もしくは科料
・(客引きをさせた使用者)100万円以下の罰金

さらに常習性が認められるケースは、より重い罰則が科されます。



おち

懲役になる可能性もあるのか。

坂本弁護士

またやり口によっては、別の法律に触れる可能性もあります。たとえばよく聞くのが、大手チェーンの系列店を騙って、「今そのお店は満席なので、別の店舗を案内しますよ」などと客引きをした場合。

ウソをついて、その大手チェーンの業務を妨害したとして、『偽計業務妨害罪』に問われる可能性があります。

おち

なるほど。

坂本弁護士

『偽計業務妨害罪』は罰則も 「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」 となっているので、より厳しくなるといえますね。



坂本弁護士

【補足解説】

また繁華街だと、ナンパなんかも多いですが、これもしつこいと法律違反にあたる可能性があります。

該当する法律が、『軽犯罪法(第1条28号)』。進路に立ちふさがって無理やり引き止めたり、しつこくついて回ったり、「相手に不安や迷惑を覚えさせる行為」を禁止しています。

違反した場合は、「拘留(1日以上30日未満の期間、刑事施設に身柄を拘束される)」もしくは「科料(1000円以上1万円未満の金銭を徴収される)」の罰則が科されます。



許可なし屋外広告


坂本弁護士

外を歩いていると、いろんな広告物を見かけると思うのですが、実は違法なものがかなりまぎれています。

おち

そうなんですか?

坂本弁護士

はい。たとえば電柱やガードレールにチラシが貼られている光景を見たことがあるかと思いますが、その多くは違法な広告となっています。



おち

たしかに、あやしげなのが多い印象。

坂本弁護士

そもそも屋外で広告を掲載しようと思うと、基本的には自治体からの許可が必要なんですね。

自治体それぞれが『屋外広告物条例』を定めており、こまかなルールは違いますが、許可なく広告を掲載したら条例違反にあたります。

おち

雑に貼られてるのとか、許可なんか絶対取ってなさそうだな。

坂本弁護士

また特に「広告を貼りつけたカラーコーン」や「広告が印刷されたのぼり」など、広告物が道路に置かれていることもありますよね。

おち

マンションや一軒家とか、不動産の広告でよく見るイメージです。

坂本弁護士

そうした広告物を道路に置く場合は、道路の占用許可も必要になります。 ただ街で見る多くは無許可で設置されている現状もあり…『捨て看板』とも呼ばれて問題になっています。



おち

違法な広告を出してる会社とかサービスは信用できないですね(笑)。

坂本弁護士

そうですね。もちろん “ルール違反” だからといって、ひとくくりに「悪い」と決めつけるのはよくないですが、堂々と違法な広告を出している会社には気をつけた方がいいと思います。

おち

ちなみに、これって公共の場所だけじゃなくて、自分の敷地内でもダメなんですか?

坂本弁護士

いろいろこまかな規定はありますが、設置する場所や大きさなどによっては、自分の敷地内でも許可は必要になります。

おち

そうなのか。

坂本弁護士

敷地内であっても、街の景観の一部にはなりますからね。

おち

そうなのか。



坂本弁護士

【補足解説】

広告物を置く場合と同じように、人が道路を “使用” する際も許可が必要となります。

道路は人や車両が通行するためのものです。そのため厳密にいえば、その本来の目的と異なる使い方をする場合は、許可を得ないといけないということになります。

たとえば道路上で、路上ライブやなにかしらのパフォーマンスをする場合、本来は管轄の警察署長からの使用許可が必要です。無許可で行った場合は、『道路交通法』違反にあたります。

ちなみにその他、公園や駅の構内、商店街などで行う場合も、その所有者や管理者の許可が必要です。

よっぽどでなければ、すぐに捕まえられるなどはありませんが、やはりトラブルになる恐れはあるので、注意した方がいいですよね。



歩きたばこ


坂本弁護士

違法な行為として、歩きたばこをはじめ路上喫煙も、やはりよく目につきますね。

おち

「路上喫煙は禁止!」みたいなのはよく見るんですが、これは路上では一切ダメって感じなんですか?

坂本弁護士

喫煙についてのルールは、各自治体が条例で定めていて。自治体ごとに異なりますが、基本的に都会の方であれば、路上での喫煙は原則NGとしている傾向です。



おち

なるほど。

坂本弁護士

たとえば具体的に、東京都豊島区の路上喫煙における条例を見てみると、

何人も、路上喫煙(第7条第1項に規定する場合を除く。)をしてはならない。ただし、吸い殻入れ(携帯用吸い殻入れその他これに類する容器を除く。)のある場所においては、この限りでない。

引用:豊島区路上喫煙及びポイ捨て防止に関する条例

と書かれています。つまり公共の喫煙スペースや、コンビニなどの店舗前に置いてあるなど、灰皿が設置されている場所はいいけど、それ以外で路上での喫煙は禁止ということですね。

おち

違反した場合、罰則とかもあるんですか?

坂本弁護士

「数千円程度の過料」を設けている自治体もありますが、特別に罰則は定めていない自治体もありますね。



坂本弁護士

【補足解説】

罰則自体は厳しくないケースも多いですが、重大なトラブルにつながりうるのが、歩きたばこなどの路上喫煙です。

たとえば小さな子どもがいる場所で、歩きながら吸っている人も目にしますが、当たって火傷などを負わせれば、『過失傷害罪』『重過失傷害罪』などの刑法犯として責任を問われます。

ちなみに『過失傷害罪』の法定刑は、「30万円以下の罰金又は科料」ですが、『重過失傷害罪』の法定刑は、「5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金(※)」と、重い刑罰を科される可能性のある犯罪です。

(※)2025年、懲役刑・禁錮刑は廃止され拘禁刑に一本化されます。

また火傷などのケガはもちろん、服やカバンなどを焦がしたりすれば、民事で損害賠償を請求される可能性もあります。

そうした結果につながりかねない行為だ、というのはぜひご注意いただければと思います。



「街の法律違反」には、くれぐれもご注意を


おち

当たり前に見慣れたものも、法律(や条例)違反だっていうものは多いんですね。

坂本弁護士

そうですね。みなさん「なんとなく悪いこと」だと認識はしていても、具体的にどういう法律違反で、どんな罰則があるかまでは把握していないことが多いんじゃないかと思います。

おち

たしかに。

坂本弁護士

もちろん法律は山ほどあるので、全部把握するのは弁護士でも無理なんですが(笑)。

ただ法律には『法の不知はこれを許さず』という、なかなか厳しい格言もあって。「法律を知らないから、やっちゃった」は許しません、というのが原則です。

なので、できるだけ知っていただき、ぜひご注意いただけると良いのかなと思います。

おち

ありがとうございます。それではどうぞ皆さま、



「街の法律違反」には、くれぐれもご注意ください!