【エンタメ弁護士 vs リアル弁護士】弁護士と『エンタメ弁護士』の間違いを正してみた
アソベン編集部
おち
エンタメコンテンツは大きな影響力を持っている。
たとえば、みなさんは「弁護士」にこんなイメージを持ってやいないだろうか?
きっとみなさん一度は見たことがあるだろう、映画やドラマなんかのこんな「弁護士」は……
(※注)例外あり
そう、これらは現実世界とは乖離した「弁護士」であり、歴々のエンタメ作品によって築かれた 『エンタメ世界の弁護士』 なのだ。
『リアル世界の弁護士』は、「異議あり!」はあんまり言わないし(言ってもソフトだし)、法廷の中で大激論が交わされることはあまりないし(話す内容は事前に伝えているし聞いてるし)、そもそも法廷に立っている時間はそんなに多くない(パソコンで書類をつくる時間が多かったりする)。
さて本日は、そんな『エンタメ世界の弁護士』がつくったみなさんのイメージを、実際の弁護士とともに正していこうと思います。
本日の弁護士はこちら!
南澤 毅吾(弁護士/アディーレ法律事務所)
東京大学法学部を卒業後、弁護士に。現在はアディーレ法律事務所 北千住支店の支店長を務める。趣味は音楽やグルメ、自炊は苦手なのでもっぱら外食派。 “弁護士ドラマ” で一番好きな作品は、海外ドラマの『SUITS/スーツ』。
特に弁護士は、『エンタメ世界の弁護士』のどういった特徴が気になっているのか?「弁護士のリアル」とあわせて教えてもらいます!
エンタメ弁護士①:分厚い本で調べものをしている
六法全書とは…日本の6つの主要な法律(憲法/民法/刑法/商法/民事訴訟法/刑事訴訟法)に加えて、関連法令などを収録した書籍。800以上の法令が載っているので、かなり分厚い。
そうですね。やっぱ弁護士の仕事ともなると、あんな分厚い本を使う必要があるんだなあ、と思って見てました。
実はいま実際には、
分厚い本はほとんど開きません。
調べものをするときに使うのは、だいたい パソコンやスマホですね。
普通のツール!
というのも、法律の条文はネットで公開されていて、パソコンやスマホから調べられるんです。もちろん人によりますが、分厚い本を開いて法律を調べようというのは、少なくなってきているかと思います。
なるほど。
また法律の条文以外でも、今はいろんなクラウドサービスが出ていて、本でなにかを調べること自体少なくなっていますね。
だいたいネット。
そうですね。もちろん専門性が高い内容など、本をあたらないといけないケースもありますが、だいたいはネットでなんとかなります。
ただ映画やドラマだと、ずっとスマホやパソコンをカタカタしていても、あんまり弁護士っぽくないですね。
まあ、そういう事情で描かれている部分もあるかと思います(笑)。もちろんこれは今の話なので、昔の事情はまた変わります。
ありがとうございます。ということで、みなさんに伝えたい 「弁護士のリアル」はこういうことになります。
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【リアル弁護士の補足解説】
エンタメ作品では、弁護士が「法律の条文をスラスラと披露するシーン」があるなど、「六法全書を全部暗記している」ようなイメージもありますが、基本的に弁護士はそれほど条文を覚えていません。
法律は膨大にありますが、実際に使うのはそのなかの一部。また大切なのは法律をどう使うかなので、文言を一言一句覚える必要もありません。
もし現実世界で「法律の条文なんて全然覚えてない」という弁護士に会っても、だいたいそうなので、ぜひガッカリしてあげないでいただければと思います。
エンタメ弁護士②:ワインやクラシックなど、趣味がハイソ
弁護士が「ハイソな趣味を持っている」というのも、『エンタメ世界』からのイメージかなと思います。
ワインとかクラシックとか嗜んでるイメージですよね。「上流階級」みたいな。
はい。ただこれも…
誤りです。
ハイソな趣味を持っている人がスタンダードではないですよね。そういう人もいるという。
だいたいはごく一般的な趣味をお持ち??
そうですね。
なるほど。これはお金持ってそうなイメージからなんでですかね?
そうかもしれないですね。もちろん高いワインをコレクションできるくらい、稼いでいる人もいると思いますが。
弁護士みんなが、そんなにお金持ってるわけじゃないぞと。
その通りです(笑)。
ありがとうございます。ということで、みなさんに伝えたい 「弁護士のリアル」はこういうことになります。
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エンタメ弁護士③:凄腕だが法外な報酬を取る
映画やドラマでは、法外な費用を取るけど、ものすごく凄腕の弁護士が登場することもありますね。
実はこういう弁護士はいないんですか?
こういう弁護士は、
いるっちゃいるかもしれません。
あ、いるかもなんですね(笑)。
契約は自由なので、納得の上で合意していれば、高額な費用を設定することだけで違法にはならないんですね。
なるほど。
なので、いるっちゃいるかもしれないんですが…ほとんどいないでしょうね。
あ、そうなんですね。でも、契約は自由なんですよね?
これは弁護士ならではの事情になるのですが、弁護士費用は日弁連(日本弁護士連合会)によって、全国的な基準が定められています。
実はその基準と比べて、不当に高額な報酬を請求したと見なされれば、弁護士資格停止などの処分を受ける可能性があるんです。
なんと。
そのため、あまりにも高額な報酬を設定することは弁護士にとってかなりリスクがあります。
いくら腕に自信があって、依頼者の方が「いくらでも払う」と言ったとしても、現実世界だとなかなか “お金をふっかける” ようなことは難しいといえますね。
当事者が納得して契約していても、ダメなんですね。
そうですね。たとえば家族が同意していなかった場合に、あとから訴えられてしまうなど、トラブルになるケースがあって。その場合、契約書があったとしても、「報酬が不当に高額だ」と判断されれば、処分の対象となります。
なるほど。それだと現実では、エンタメ世界のような「法外な報酬を取る凄腕弁護士」はなかなかいなそうですね。
そうですね。
ありがとうございます。ということで、みなさんに伝えたい 「弁護士のリアル」はこういうことになります。
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【リアル弁護士の補足解説】
『エンタメ世界』には、「どんな裁判でも勝つ」という超凄腕弁護士も存在しますが、現実世界で裁判の強い弱いを分ける大きなポイントは、いかにミスをしないかだったりします。
つまり勝てる見込みのない裁判で、「起死回生の一手による大逆転」のようなことは基本的にはありません。
なのでもし現実に「どんな裁判でも勝つ」という弁護士が存在したら、「勝てる事件だけ選んで引き受けている弁護士」ということになるかもしれないですね。
エンタメ弁護士④:証拠調べなどで動き回る
映画やドラマの弁護士は、証人と接触したり、証拠を集めるためにいろんな場所に足を伸ばしたり、かなりフットワーク軽く動き回ってますよね。
たしかにあんまり事務所の中にはいないイメージ。
ただ現実世界の弁護士は、
あんなに好き勝手に、外を動き回りません。
もちろん案件によっては足を使うこともありますが、そんなにフットワーク軽く動き回ることはできません。
特に刑事事件だと、いろいろ動き回ったりするイメージでした(笑)。
一般的な刑事事件だと、そこまで事務所の外を動き回ることはないですね。というのも弁護士が外に出て動く際、多くの場合、依頼者の方に「出張費」などとして費用を負担していただくことになります。
動くとお金がかかるのか。
はい。なので必要があれば、基本的に依頼者の方に確認してから動きます。勝手に動き回ることはしないですね。
まあボランティアではないですもんね。
そうですね。自分はもちろん、一緒に働いている人の給料もあるので、お金を全く度外視して、好き勝手にいろいろ動いていくのは難しいですよね。
ありがとうございます。ということで、みなさんに伝えたい 「弁護士のリアル」はこういうことになります。
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【リアル弁護士の補足解説】
現実世界とエンタメ世界の大きな違いは、「お金」の問題だったりします。
得られる報酬などの関係から、現実ではどうしても「できること」「できないこと」が出てしまうんですが、映画やドラマではそうしたお金は度外視していろんなことをやっていたりするんですよね。
フィクションとわかってはいながら、「現実もこうだったらいいな」と少し羨ましく『エンタメ世界の弁護士』を見てしまうこともあります(笑)。
今日のおさらい
本日の弁護士が気になる『エンタメ弁護士』がこちら!
そもそも他の職業もデフォルメして描かれていると思いますが、なんか弁護士のイメージはエンタメの影響が強い感じがしますね。
一般的に関わる機会が少ないのもあって、おそらく多くの人は弁護士のことってよく知らないんですよね。
たしかに。
やはりよく知らない世界のことなので、身近なエンタメ作品の弁護士のイメージが強くなるところはあるのかなと思います。
それは『リアル世界の弁護士』を認知してもらう上でも、しっかり “弁護士のリアル” を届けていかないとですね。
そうですね。
というわけで、こちらが本日ご紹介した 「弁護士のリアル」。
みなさまこれから『弁護士』といえば、ぜひこちらの
『リアル世界の弁護士』の方でよろしくお願いします!
映画やドラマの中では、六法全書をはじめ、弁護士が分厚い本を開いて調べものをしていることがありますよね。