「窃盗罪」と「横領罪」どっちの罪が重い?!【全5問】刑罰の重さクイズ
アソベン編集部
しょーじ
※記事内に出てくる内容は、いずれも作成時点(2024年5月)の情報に基づいています。
突然ですが、皆さんクイズです!
★強盗罪⇒
5年以上の有期懲役(刑法 第236条1項)
★傷害致死罪⇒
3年以上の有期懲役(刑法 第205条)
強盗罪…暴力や脅迫などによって、相手が反抗できないようにしたうえで、お金などを奪った場合に成立する犯罪
傷害致死罪…傷害(けが)を負わせ、その傷害が原因で相手が死亡した場合に成立する犯罪
こんにちは! アソベン編集部のしょーじです。
冒頭から突如始まったクイズ。皆さん、わかりましたでしょうか。
人が亡くなっている「傷害致死罪」より、「強盗罪」のほうが重いの…?!って疑問に思ったりしませんでした?
こんな感じで実は、 刑罰の重さって、 意外と自分のイメージと違うことがあるんです。
ということで今回は、刑罰の重さについて、皆さんがどれだけ法律と近しい感覚を持ち合わせているのか。刑罰の重さクイズにて検証していこうと思います!
そんな今回のクイズを出題いただくのは、こちら!
神野 由貴(アディーレ法律事務所 弁護士)
税関職員を経て、弁護士に。アディーレ法律事務所にて、不貞慰謝料の請求における交渉・訴訟、また弁護士の視点からマーケティング施策などに携わる。プライベートでは、小学生の頃からの歴史好き。歴史ドラマやYouTube、書籍など、普段から様々な歴史コンテンツを楽しみ、時間ができれば、歴史的な名所にも足を運んでいる。(兵庫県弁護士会 所属)
「刑罰の重さクイズ」のルール説明!
クイズのポイント!
今回は「刑法」から問題を出題。そのなかで犯罪はそれぞれ、「〇〇年以上、××年以下の有期懲役」「〇〇万円以下の罰金」といった形で、 “どういう刑罰” を “どういう範囲で” 科すことができるかが決められています。
特に今回は「有期懲役」が科される2つの犯罪において、どちらの “上限年数” が大きいか・小さいかを推測してお答えいただければと思います。
クイズは全部で5問です。それでは、
「刑罰の重さクイズ」はじまります!
「刑罰の重さクイズ」全5問
第1問
★傷害罪⇒
15年以下の懲役または50万円以下の罰金(刑法 第204条)
★暴行罪⇒
2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料(刑法 第208条)
クイズのポイント!
傷害罪と暴行罪の違いは、「ケガの有無」。
簡単にいうと、暴行などによって被害者にケガをさせたら『傷害罪』、ケガをさせなかったら『暴行罪』が成立します。『傷害罪』は実際にケガをさせているので、『暴行罪』より当然刑罰は重くなりますよね。
ちなみに、傷害の結果、被害者が死亡すれば、冒頭のクイズで紹介した『傷害致死罪』となります。
そのため他人に暴行などを加えた場合、「暴行罪 < 傷害罪 < 傷害致死罪」と刑罰は重くなっていきます。
傷害罪…故意に他人の身体に傷害(けが)を負わせたときに成立する犯罪
暴行罪…故意に他人の身体に暴行を加えたときに成立する犯罪
第2問
★遺失物横領罪⇒
1年以下の懲役または10万円以下の罰金若しくは科料(刑法 第236条1項)
★業務上横領罪⇒
10年以下の懲役(刑法 第253条)
クイズのポイント!
どちらの犯罪も、すでに所有者などの占有を離れている他人の物や財産を、無断で自分のものにしてしまう行為(横領)。しかし、 横領の対象となる物や財産の置かれている状況が異なります。
・遺失物横領罪⇒道に落ちていているなど、誰にも占有されていない物や財産
・業務上横領罪⇒業務(社会生活上の地位に基づいて反復・継続して行われる事務)上、自分が占有している物や財産
前者の方がハードルを越えてしまいやすい(ついネコババしてしまいやすい状況と言える)一方、他者の信頼を得て預かっている物を横取りするのは、信頼を裏切る行為であり、より悪質性が大きいと言えるでしょう。
遺失物横領罪…たとえば、他人が落とした財布などを拾って自分のものにしたときなどに成立する犯罪
業務上横領罪…たとえば、会社から管理を任された売上金を勝手に自分で使ったときなどに成立する犯罪
第3問
★窃盗罪
10年以下の懲役または50万円以下の罰金(刑法 第235条)
★横領罪⇒
5年以下の懲役(刑法 第252条1項)
クイズのポイント!
この2つは、基本的に他人の物を勝手に自分の物にしてしまう点で共通する犯罪です。ただし、 犯罪が行われた時点で「物を管理していたのが誰か」 という点が異なります。
・窃盗罪⇒管理していたのは「他人」
・横領罪(単純横領罪)⇒管理していたのは「自分」
特に「他人」が管理する物や財産を盗む『窃盗罪』は、被害額が少額の万引きやスリ、綿密な計画によって高額の金品を盗む空き巣など、その手口や被害額、悪質性には非常に幅があります。
そういった事情も踏まえ、『窃盗罪』は罰金刑から最大10年という重い有期懲役まで、科せられる刑罰の幅も、広く規定しているといえるでしょう。
窃盗罪…他人の物や財産を盗む犯罪
横領罪(単純横領罪)…他人から頼まれて管理している(他人の)物を自分のものにする犯罪
第4問
★住居侵入罪⇒
3年以下の懲役または10万円以下の罰金(刑法 第130条前段)
★不退去罪⇒
3年以下の懲役または10万円以下の罰金(刑法 第130条後段)
クイズのポイント!
人の住居に勝手に入ったら『住居侵入罪』、(許可を得て入り)途中で 「出ていけ!」と言われたにも関わらず、その場にとどまれば『不退去罪』になります。
ちなみに、この犯罪が記載されているのは同じ「刑法 第130条」。当初 “許可を得ているか” の違いはありますが、「出ていけ!」と言われた時点で『不退去罪』も、 “許可のない状態になった”と考えることができるでしょう。
そのため結局、どちらも他人の住居などに、「許可なく勝手に上がり込んでいる」 と判断でき、同様の刑罰が規定されているといえるかもしれません。
住居侵入罪…正当な理由なく他人の住居に侵入した際に成立する犯罪
不退去罪…要求を受けたにもかかわらず、人の住居などから退去しなかった場合に成立する犯罪
第5問
★殺人罪⇒
死刑または無期もしくは5年以上の懲役(刑法 第199条)
★現住建造物等放火罪⇒
死刑または無期もしくは5年以上の懲役(刑法 第108条)
クイズのポイント!
現住建造物等放火罪の法定刑は、殺人罪と同じ「死刑または無期もしくは5年以上の懲役」です。
現に人がいる建物などへの放火は、人の命に危険を及ぼす可能性が高い非常に危険な行為であるため、殺人罪と同様の重い刑罰が規定されているといえるでしょう。
殺人罪…殺意を持って、他人の命を奪ったときに成立する犯罪
現住建造物等放火罪…「現住建造物等=現に人がいる建物など」に、放火した場合に成立する犯罪
刑罰の重さクイズ、今回はここまで!
いかがだったでしょうか。
皆さんの感覚は、法律と近かった? それとも、けっこうズレていた?!
今回取り上げた以外にも、世の中にはもっと様々な犯罪が!また新しい「刑罰の重さクイズ」を掲載予定なので、ぜひ次回も挑戦してみてください!