
【今週の架空ニュース】駅のホームで手つなぎ禁止?!恋人たちの『ロマンス反乱』がSNSで話題に

アソベン編集部
おち
♪♪ピンポン

こんにちは、今週の架空ニュースのお時間です。

本日、架空のニュースを解説いただくのがこちら。

吉田 圭佑(弁護士/アディーレ法律事務所)
岩手県出身。中央大学法科大学院を卒業後、弁護士に。現在はアディーレ法律事務所にて、債務整理、交通事故の被害、浮気・不倫の慰謝料問題など幅広い案件を担当する。またプライベートでは多趣味であり、特にアニメ音楽や声優など、 “オタクカルチャー” に造詣が深い。
それでは、

本日の架空ニュースです。
【架空ニュース】駅のホームで手つなぎ禁止!?恋人たちの『ロマンス反乱』がSNSで話題に

東京都内の主要駅で、恋人同士の「手つなぎ禁止」ルールが導入され、SNS上で大論争が巻き起こっています。
駅側は「混雑時の安全確保」を理由に説明していますが、「こんなルールありえない!」と恋人たちが猛反発。「#ロマンス反乱」のハッシュタグがトレンド入りする事態となっています。

カップルの一人、田中彩香さん(仮名25歳)は、「手をつなぐことが私たちの愛の証。突然の禁止令にショックを受けた」と困惑の表情を見せます。SNS上でも「恋人と手をつなげないなんてロマンチックじゃない!」「駅は愛の敵か?」といった声が次々と上がり、抗議の嵐となっています。
駅前では、手をつないで写真を撮りSNSに投稿する「手つなぎチャレンジ」が流行。これに対し、駅側は「安全が最優先」との立場を崩していませんが、恋人たちのロマンスを巡る攻防は続きそうです。
駅の「手つなぎ禁止」ルールに法的問題は?

よろしくお願いします。

まずざっくりとですが、今回の騒動についてどのような見解をお持ちでしょうか。


「手つなぎ禁止」ルールの理由として「混雑時の安全確保」が挙げられていますが、まず一般論として、混雑時に手をつなぐことがなぜ安全を損なうのか、疑問はありますね。
たしかに狭い通路なら、手をつなぐことで他の人が通れないといった状況も想像はできますが、一律に禁止するほどの問題なのか。マナーの啓蒙や悪質な利用者への個別的な対応で解決できないのか。
「混雑時の安全確保」という目的に対する手段としては、適切でない感じはしています。

なるほど。実際に撤回を求める抗議活動も広がっているようですが、法的にはいかがでしょうか。

やはり恋人同士の「手をつなぐ」行為に対し、一律に制限を課すことは、法的にも議論の余地があると考えられます。


まず前提として、鉄道事業者が公共の安全と秩序を維持するために、利用客に対して、ルール(制限)を課すこと自体に問題はないといえます。
ただしそのルールは、憲法や法律といったそのほかのルール(法令)と整合する、合理的な範囲でなければなりません。

合理的な範囲。

たとえば今回のルールは、「恋愛の自由」も論点として考えられるでしょう。
「恋愛の自由」は『幸福追求権(憲法13条)』の1つとされ、憲法で保障された自由として、みだりに侵害してはいけません。

はい。

そして今回駅側が禁止にした、恋人同士で「手をつなぐこと」は、恋愛の重要な要素であるという見方もできます。そうなれば、駅構内の範囲に限られはするものの、一律に禁止することは、個人の「恋愛の自由」を不当に制約しているとも考えられます。
「手つなぎ禁止」ルールの適否は、こうした観点も踏まえて、「公共の安全を確保するために、本当に必要か」といった点から判断されることになるでしょう。
「手つなぎ禁止」ルール、撤回への方法は?

では実際に「手つなぎ禁止」ルールを撤回させようと考えるなら、具体的にどのような対応が考えられるでしょうか。

裁判などで撤回を求める請求を行うことも考えられなくはないですが、現実的に考えるなら、任意で撤回を求めていく方法を検討した方がいいでしょう。


なるほど。

たとえば弁護士など法的見解に詳しい人から、撤回を求める意見書を出していくのは一つの手段です。
また署名を集めるといった方法もいいかもしれません。法的効力はないですが、これだけの意見があると示せれば、鉄道会社も簡単には無視できません。
また、すでに行われているようなネットでの抗議活動も有効だと思います。
恋人たちのロマンスは「ハラスメント」にあたるか?

今回のようにルールでなにかしらの制限を課す場合、それによって「制約される権利や自由」と「守られる他者の利益」と、どのように調和を図っていくかが問題となります。


はい。

今回は「安全確保」が理由(ルール導入の目的)でしたが、たとえば恋人同士の “親密な行為” について、目に入って不快だから、制限してくれといった意見もあるかもしれません。
個人的に、そうした『人に恋愛感情を惹起させるような、恋人同士の “親密な行為” 』を総称して、「ロマンス行為等」と呼ばせてもらいますが、


手をつなぐとか、抱き合うとかっていう感じですね。

はい。そうした「ロマンス行為等」を、(一部の)他の人を不快にするものとして、駅などの公共の場において制限できないか、も議論の余地はあるでしょう。
最近だと多様な「ハラスメント」が存在し、問題となっていますが、これはある意味で「ロマンスハラスメント(ロマハラ)」が成立し、それを制限することは認められるのか、ともいえるかもしれません。

たしかに、さみしさが募った独りの夜など、ふと見せつけられると心にダメージを食らうこともありますよね。

そうですね。もちろん「恋愛の自由」は重要ではありますが、たとえばその行為が多くの人の生命や身体に大きな影響を与えているのだとすれば、優先して守る必要はないといえるでしょう。
ただ私も恋愛に不満足を抱える身として、しばしば精神的なダメージを受けることはありますが、残念ながら一般的に、そこまでの重大な権利侵害が及んでいるとは考えられません。

まあそうですよね。


また、ハラスメントは「いやがらせ」や「いじめ」を指す言葉ですが、基本的に「ロマンス行為等」を行っている人は、他者を攻撃する(権利を侵害する)意図で行ってはいないでしょう。
こうした主観面を踏まえても、容易に「ロマハラ」は成立せず、常識的な範囲での「ロマンス行為等」を規制することは難しいと考えられます。
もちろん気分が盛り上がったからといって、公の場で裸になったり、性交渉をしたりすれば話は別です。そのような行為には、公然わいせつ罪(刑法174条)が成立する可能性があります。

なるほど。

まあ社会的な事情によっては、今後公共の場で「ロマンス行為等」を行うことが、「ロマハラ」として規制されることもあるかもしれないので、ロマンスは2人の世界でやった方がいいんじゃないかな、やってほしいなと思います。

そうですね、ロマンスはできれば人がいない場所で、お楽しみいただければと思います。

よろしくお願いします。


それでは「今週の架空ニュース」のお時間はここまでです。吉田先生、ありがとうございました。

ありがとうございました。

鉄道会社が駅構内での「手つなぎ禁止」ルールを導入したことで、恋人たちから猛反発が起きているようですが、本日はこのルールの問題について、吉田先生と考えていきたいと思います。