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国選弁護人は誰でも依頼できる?私選弁護士との違いなど、弁護士に聞いてみた!

弁護士

川原朋子

こんにちは、アソベン編集部です。

本日、弁護士に聞いてみる内容がこちら!


「国選弁護人ってどんなもの?本当に無料?どんな人が頼めるの? 」
「国選弁護人で来てくれる弁護士って、どんな人?選べるの? 」
「私選弁護人とは何が違うの?やってくれることに違いはあるの?」

刑事事件となったときの対処法や、経済的な負担を抑えつつ適切な法的支援を受ける方法など、知っておくと安心な情報も盛りだくさんです。ぜひ最後までお読みいただき、もしものときのために、備えておきましょう!

私人逮捕について教えてくれる弁護士

【きょうの弁護士】川原 朋子
青森県出身。「人を直接助ける仕事がしたい」と、働きながら夜間のロースクールに通い、司法試験に合格。弁護士に加え、メンタル心理カウンセラーなど多数の資格を持つ。現在、アディーレ法律事務所では、弁護士の立場からマーケティング施策などに従事。プライベートでは海外ドラマが好きで、なかでも好きなのは「刑事もの」や「弁護もの」。特に女性弁護士アリーが主人公の『アリーマイラブ』は、子どもの頃から何度も見返すほどのお気に入り。(埼玉弁護士会 所属)


国選弁護制度の基礎知識

「国選弁護人」とは、国が、被疑者や被告人の弁護活動を行わせるために選任した弁護士のことです。

このような制度を、国選弁護制度(被疑者国選・被告人国選)といいます。

国選弁護制度は、簡単に言えば「お金がなくても弁護士をつけられる制度」となります。


国選弁護制度とは?

国選弁護制度の対象となるのは、「刑事事件で勾留された被疑者や被告人(起訴された人)」です。

例えば突然逮捕され、引き続き勾留されて「お金がないけど弁護士に頼みたい」といったとき、基本的には無料(※)で弁護人を選任してもらえます。

(※)資力があることが分かればあとで負担することもあります。

すごくありがたい制度ですよね。

なぜこのような制度が設けられているのでしょうか。憲法第37条で次のように定められています。

「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができる。被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附する。」

国選弁護制度は、この弁護人を依頼する権利を実現するためのものです。

もちろん十分なお金があるときは、自分で弁護士を頼めるので、基本的には私選弁護人を依頼します。


国選弁護制度には、被疑者国選と被告人国選の2種類がある

国選弁護制度には2つのタイプがあります。

1. 被疑者国選弁護制度:被疑者が勾留された段階で使える
 (まだ起訴されていない状態)
2. 被告人国選弁護制度:起訴された後に使える

通常、刑事事件は 「①逮捕」⇒「②勾留」⇒「③起訴」 という流れで進んでいきます。

「①逮捕」された状態では、国選弁護人は選任されません。

この段階で弁護士のアドバイスを得ようと思うときは、私選弁護士に依頼するか、弁護士会の当番弁護士制度を利用します。当番弁護士に勾留後の国選弁護人を依頼したい場合には、相手が応じれば被疑者国選弁護人になってもらえます。

逮捕後「②勾留」されたら、『被疑者国選弁護制度』を使うことができます。


国選弁護人は裁判所が選任する

国選弁護人は、勾留された人や起訴された人が、自分で好きな人を選べるわけではありません。

裁判所が日本支援センター(法テラス)に伝え、その人選に基づいて裁判所が選任します。自分で探す手間がかかりませんが、やはり「自分で選べない」ことには注意が必要です。

なぜなら弁護士も人なので、被疑者や被告人との相性が合わないこともあります。

しかし、気に入らないからといって、その国選弁護人を解任して、他の国選弁護人に変更してもらうことは基本的にできません。解任できる理由は限られており、実務でも解任はほとんど認められません。


国選弁護人を依頼できる条件

国選弁護人を頼めるかどうかは、『被疑者国選弁護制度』と『被告人国選弁護制度』で条件が違います。


被疑者国選弁護制度の場合

主に2つの条件があります。「①資力要件(あなたの経済状況)」と「②勾留されている」ことです。

①資力要件
・基本的に、預金や現金が50万円未満

この資力要件を満たさない場合でも、貧困などの理由により私選弁護人が選任できず、本人以外が選任した弁護士もおらず、勾留状が発せられたのであれば、国選弁護人が選任されます。

②勾留されている
・逮捕されている状況では国選弁護人は選任できません
・在宅で取り調べを受けている状況では国選弁護人は選任されません


被告人国選弁護制度の場合

罰則が非常に重いなどの 『必要的弁護事件』では、資力要件に関わらず、裁判所が必ず国選弁護人を付けてくれます。 通常、国選弁護人は1人ですが、事件によっては2人付けられる場合もあります。

それ以外の 『任意的弁護事件』では、「資産が50万円未満である貧困その他の事由により、私選弁護人を選任できないとき」には、基本的に被告人が請求することで、国選弁護人が選任されます。


国選弁護人の費用:基本的には無料だが、費用負担を命じられることも

国選弁護制度を利用しても、刑事事件に関連してかかる費用をすべて負担してくれるわけではありません。

以下が、主な「無料になるもの」「自己負担になるもの」になります。

【主な無料になるもの】
・弁護人の報酬
・接見(面会)の日当
・公判(裁判)出廷の日当
・コピー代など実費
・弁護人の交通費 など

【主な自己負担になるもの】
・罰金や科料:有罪の場合に支払うべきお金
・示談金:被害者との和解金

つまり、 弁護人の仕事に対する報酬は基本的に無料だけど、それ以外の上記の費用は自分で払わないといけない ということです。ここはしっかり理解しておきましょう。


川原弁護士

【補足解説】

国選弁護人の費用は、法的には訴訟費用の一部とされます。事前負担は求められませんが、事後的に負担を命じられることがあります。

裁判所は刑事事件の判決で刑を言い渡すとき、被告人に訴訟費用の全部又は一部を負担させます。しかし、「被告人が貧困のため、訴訟費用を納付することができないことが明らか」である場合には、負担させないこともできるのです。

通常、費用を負担できないから国選弁護人を付されているわけですから、 有罪判決が出ても、費用負担がないことがほとんど です。しかし、資力があるとわかったような場合は、負担を命じられることもあります。

また、不起訴になった場合や無罪になった場合には、訴訟費用の負担はありません。


国選弁護人の依頼方法

ここからは、国選弁護人に依頼する流れを見ていきましょう。

結論、 基本的には「国選弁護人を付けてください」と言えば、必要な書類をもらえるので、記入して提出するだけでOKです。

ただし、タイミングによって手続きが変わってくるので、詳しく紹介します。


(1) 被疑者国選の場合:警察官や警察職員に申し出る

勾留中であれば、『被疑者国選弁護制度』を利用できます。 被疑者国選を頼むときは、下記のような流れが多いです。

1. 勾留を請求された日、逮捕された警察の留置場などで、警察職員に「国選弁護人を付けてください」と伝える。


2. 資力申告書と選任請求書を受け取って、記入して提出。


3. 警察が裁判所に連絡し、裁判所が法テラスに連絡して法テラスから国選弁護人の候補者の通知を受け、候補者を国選弁護人に選任。

初めはいらないかなと思い、依頼しなかった場合、後から請求することも可能です。

ただ、なるべく早く弁護人のアドバイスを受けた方がいいので、勾留されたらすぐに選任希望を伝えた方がいいでしょう。


(2) 被告人国選の場合

勾留段階で「被疑者国選弁護人」がついていた場合には、自動的にその弁護士が「被告人国選弁護人」になります。

起訴されるまで弁護士がついていない場合は、自宅に届く起訴状に弁護人をどうするのか問い合わせる書面が同封されています。

国選弁護人を希望する場合、その書面に国選弁護人を請求する旨を記載して提出し、要件を満たしていれば「被告人国選弁護人」が選任されます。


国選弁護人と私選弁護人の違い:選任方法と活動範囲

国選弁護人と私選弁護人は、主に以下3つの違いがあります。

【主な国選弁護人と私選弁護人の違い】
1. 選び方:私選は自分で選べる、国選は選べない
2. 費用:私選は有料、国選は費用負担なしで依頼
3. 活動範囲:私選の方が広いかも


(1)選べるかどうか

私選弁護人と国選弁護人、最大の違いは弁護士を「選べるか選べないか」です。

【私選弁護人】
・自分で好きな弁護士を選べる
・得意分野や経験を考慮して選べる
・相性の良さそうな人を探せる


【国選弁護人】
・裁判所が選んでくれる
・自分では選べない
・でも、手間はかからない

例えば、私選なら「女性の弁護士がいいな」と選べますが、国選だとそうはいきません。

一方で、私選は自由に選べる分、探す手間もかかるし、相性が合わなかったときのリスクも自分で負うことになります。国選は選べないけど、その分手続きが簡単です。

お金に余裕があれば私選、ない場合は国選を検討するのが一般的ですね。 どちらにもメリット・デメリットがあるので、自分の状況をよく考えて選ぶのが賢明です。


(2)費用がかかるかどうか

国選は基本的に無料、私選は有料です。

通常、弁護士に依頼する場合、初めに着手金としてまとまった金額を支払います。

さらに接見にかかる日当(※)や、交通費などその他諸々の実費、被害者との示談が必要なら、示談が成立した場合の成功報酬も支払う必要があるでしょう。

(※)着手金に含まれている場合もあります。

また通常、起訴前である逮捕勾留段階と、起訴後の被告人となった段階で、契約は別に行うため、起訴されたら、再度着手金を支払う必要があると思います。

こうした費用は、弁護士事務所によって多種多様です。私選弁護人を依頼する際は、事前にきちんと確認しましょう。


(3)活動範囲は法律上は同じ。だけど…

法律上、私選弁護人だから特別にできること、というのはありません。国選弁護人も私選弁護人も、依頼人のためにできることは同じです。

ただし、私選弁護人は本人が費用を負担しますので、その関係で活動範囲が広いこともあります。


国選弁護人から私選弁護人への切り替え:可能だが注意点あり

「自分にはお金がないけど、家族が私選弁護人を雇ってくれることになった」などの事情で、途中で私選弁護人に切り替えることもできます。

ただし注意点もあるので、よく考えてから行うようにしましょう。


(1) 切り替えの手続きと流れ

国選から私選への切り替えは、意外と簡単です。

【切り替えの基本的な流れ】
1. 私選弁護人を探して依頼する
2. 私選弁護人が「弁護人選任届」を検察や裁判所に提出
3. 裁判所が国選弁護人を解任

国選弁護人がついていても、いつでも私選弁護人に依頼できます。

私選弁護人に依頼したことは、国選弁護人の解任事由なので、その後国選弁護人は解任されます。


(2) 切り替えによる費用発生のリスク

国選から私選に切り替えると、お金がかかります。私選弁護人に弁護士費用を払う必要があるためです。

私選弁護人の費用は、法律事務所や刑事事件の内容によって異なりますが、 着手金、交通費、実費、接見日当、成功報酬などで、どんなに安くても数十万円はかかります。100万円を超えることも珍しくありません。


(3)国選弁護人には戻れない

私選弁護人に依頼したものの、「あれ?前の国選弁護人の方がよかったかも……」と思うこともあるかもしれません。

しかし、一度国選から私選に切り替えると、再度国選弁護人を選任することはできません。

切り替えたいと思ったら、本当に必要か、よく考えてから決めましょう。もし迷ったら、現在の国選弁護人や、相談したい私選弁護人に、費用やメリット・デメリットも含めてしっかり相談するのがいいですね。


民事事件は無料で弁護士に依頼できるの?

基本的に、完全無料で民事事件を弁護士に依頼することは難しいです。

弁護士も仕事で弁護士業務をやっていますので、無料となると、生活ができなくなってしまいます。

国選弁護人も、被疑者や被告人の費用負担はありませんが、弁護人は無料奉仕しているわけではありません。弁護人としての報酬は「法テラス」から支払われています。

経済的な事情を抱える方は、民事事件も次のような方法で弁護士に相談・依頼できれば、経済的負担を軽減することができるでしょう。


(1)日本司法支援センター(法テラス)を利用する。

法テラスは国が設立した法的トラブル解決のための支援センターです。

ここには、「民事法律扶助制度」があります。 一定の資力基準などの条件を満たす方は、この制度を利用することで、無料で相談できたり、弁護士費用の立替えを受けられます。

弁護士費用を立替えてもらうと、分割返済する形で経済的負担少なく弁護士に依頼できます。また、一般的な法律事務所よりも費用は低額に抑えられているので、初めにまとまったお金がない方にとっては、大きな助けになりますよ。


(2)弁護士会や自治体の無料相談を利用する

弁護士会や自治体では、無料の法律相談を定期的に行っています。

電話でできたり、対面での相談が必要だったり、相談方法は主催先によって様々です。一度調べてみるとよいですね。


(3)成功報酬制の弁護士事務所に依頼する

一部の弁護士事務所では、案件によっては、着手金なしの成功報酬型で依頼を受けることもあります。

依頼時にお金がなくても、事件が終了して何らかの利益が得られれば、その利益から弁護士費用を後払いする形です。


【まとめ】国選弁護制度を理解して、いざというときに適切な法的支援を受けよう

国選弁護制度は、経済的に困難な人でも、無料で弁護士のサポートを受けられる制度です。

基本的に費用がかからず、手続きも簡単なのが大きなメリット。ただし、弁護人を選べないなどのデメリットもあります。私選弁護人との違いをよく理解し、自分の状況に合った選択をすることが重要です。

刑事事件の当事者となったら、まず落ち着いて状況を確認しましょう。

基本的に費用が負担できるのであれば私選、できなければ国選ですが、よく考えて決めることが大切です。 本人が負担できなくても、家族がその人のために私選弁護人を雇うことはすくなくありません。

どちらを選んでも、弁護士のサポートを受けることが何より重要。困ったときは、ためらわずに法的支援を求めてください。あなたの権利を守るために、適切な選択をしましょう。